月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

銀色の雨

〇水の素描41


何を刻むstargazer星屑の軌跡の淋しきひとの恋しき


白鍵におどる左手 花冷えの闇に燦(きら)めくショパンのトリル


空からは銀色の雨の一滴(ひとしずく)汝(な)が去りし後のバスの停車場


ゆめはゆめと知りつつながむ白昼の回廊ぬけて黒揚羽(くろあげは)とぶ


ブロッコロゆでこぼす朝気づく余白 旅びとゆけるあとの食卓



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六月の短歌 其の四

佳品嘆美43

(メダルド・ロッソ『この子を見よ』1906–1907年)


初夏や紫陽花咲きぬ大理石(なめいし)の裸形の美女の像をめぐりて
(堀口大學『パンの笛』)

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妖艶かつ絢爛たる言葉を駆使する詩人の目は、石から彫り出された美を初夏の花影にとらえる。新しい「自然」の創造、それが芸術。


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暗渠

〇水の素描40


なにもないなにもなかつた裏切りとむらさき木槿(むくげ)のほかにはなにも


ほろびしものの名前も知らず飴色の琥珀にとどまる時間(とき)のたしかさ


帰らぬ日帰らぬ時よ夕刻の埠頭の霧に溶けるロング・グッドバイ


喪失は底ぬけのやみ 蒼穹をはろばろとゆく雲のひとつ影


都市をくぐる暗渠(あんきょ)の水の音を聴く夜ふかまれば花落ちむとす


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火の粉

〇水の素描39


カメリアを浮かべた盥で顔を洗う汽車で旅立つ日曜の朝


火の粉散らし飛行船燃ゆ空の下 青年将校が交わすくちづけ


水銀柱ではかれない恋の圧力は吸い殻の散らばる寝床の情事


青い夜 回転木馬と白い月 初恋のきみと五月の森で


庭の鍵がみつからぬ夢の涯にこそアナーキストの恋も終わりぬ


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五月の短歌 其の伍

佳品嘆美42
(ジャクソン・ポロック『Number 1A』1948年)

松の葉の葉毎に結ぶ白露の置きてはこぼれこぼれては置く
(正岡子規『竹乃里歌』)

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虚子の計らいで臥室の窓に入った硝子。病で寝たきりのまま、景色を洞察する歌人の目に、緑は滲み、涙のごとき露はこぼれる。



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