月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

雪の上の足跡


蟲(むし)の約束に林を渡る啄木鳥(きつつき)よ。
(鴨は𧮾(たに)の月明かりに水浴(みあ)みしてゐる)

参星(オリオン)が来た! この麗はしい夜天の祝祭(まつり)。
裏の流れは凍り、音も絶え、
遠く雪嵐が吼えてゐる……。

落葉松林(からまつばやし)の罠に、何か獲物が陥ちたであらう。
弟よ、晨(あした)、雪の上に新しい獣の足跡を探しにいかう。(吉田一穂『少年』)

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昨夜は雪が降り、今朝も引き続き冷気で、民家や車の屋根や庭先、人通りの少ない道に白く積もった綿雪が溶け残った。

まさきつねが住む地域はめったに大雪が降ることはない。だから白い雪化粧をした朝は、大人には清々しい心地がして、子どもたちには格好の遊び場になる。子どもたちは手袋をして、車やトタンの上などに積もったわずかな雪をかき集め、小さな雪だるまや雪うさぎを作ったり、互いの背中に雪屑を入れてはしゃぐような、冬ならではの遊びをほんの数時間の間楽しむ。

ところで、雪の深い国では一面の雪景色も、雪の上に残された誰ともどんな生きものとも判別の難しい足跡も、さほど珍しいものではないだろう。ここら辺りでは、雪の上に残った生きものの足跡といえば、まずは猫か、近所を散歩する犬と決まっている。
あとはせいぜい、ゴミを漁る烏くらいなものだろうか。お正月の前後に雪が降り積もった場合は、正月飾りの稲穂から零れた米を狙う雀のかわいい足跡が玄関先に残っていたりするが、その程度が考えられる動物としては関の山だ。

うちの三毛猫なども寒い朝となれば、窓のカーテン越しに庭を眺めて「まあ寒いわね。お出かけなんかしてられないわ」と引き籠もってしまうから、庭先に降り積もった雪の上に足跡を残すようなことはしない。だがそのかわり、近所の若い雄猫が他人の家の庭も構わず堂々と、積もったばかりの雪の上に足跡を残していく。それを家の中から目ざとく見つけたうちの子は「誰? あたしんちの庭を荒らしたのはどこのどいつよ」とにゃあにゃあ勝手に腹を立てているのだが、いずれにしても後の祭りというものだ。

よその家の猫のものであっても、雪の上に残された梅の花のような足跡は何とも可愛らしい。
そのあと煉瓦塀の上にのぼって、冷たくかじかんだらしい前脚をぺろぺろ舐めている様子などを見かけると、早くお家に戻ってストーブの前で暖まったら良いのにと余計な心配までしてしまう。

雪が降った朝の短いひとときの風物詩である。


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さて話変わるが、フィギュア・スケーターやスケート有識者は氷上に残されたエッジ痕やトレースを見て、それがどの選手のものか判別出来るものなのだろうか。氷上ストーカーみたいなマニアックな話をするつもりはないのだが、スケーティングの美しい選手のトレースは流れるリボンのように綺麗だろうと想像する。同じ選手のものであっても、練習を積んで進化していけば、そのエッジの痕も見違えるように変わってくるのだろう。

浅田選手の2010-2011年エキシビションプログラム、バラード1番の進化を見る動画がUPされていたので、ご紹介しておく。

☆浅田真央の2010-2011EXバラード1番の進化を見る動画☆

今季はジャンプの改造ということで、多くの人の目はジャンプの進化に注がれたが、各要素ごとで時系列にまとめられたこの動画は、それ以外のスケーティングや要素の演技も、この1シーズンの間にいかに洗練され伸びやかに磨かれてきたか、その変遷が一目瞭然でよく分かる映像になっている。

実績のある選手であるにも拘らず基礎練習を全く嫌がらずにしてくれると、久美子コーチが仰っていたが、基本に忠実に同じことを繰り返しながらも進化していくこうした日々の積み重ねが、ほんの小さなエレメンツにも真の実力を付けさせていくきっかけになるのだろう。

ジャンプだけではない、イーグル、ツイズル、スパイラルあらゆるエレメンツで彼女が見せるほんの僅かな仕草ひとつ、ポジションひとつが、恣意的にポジションを付けたモデルかお人形の絵のように、綺麗に構図の中に収まっている。しかもその要素すべてが、流れる楽曲同様、途切れなく柔らかいトレースを描いてしなやかに続いている。浅田選手の演技から一瞬たりとも目が離せず、その瞬間瞬間に見惚れてしまうのは、こうした豊穣な味わいを持つ所作と妙技の比類なき美しさによるものなのだ。

雪の上の足跡は寒い冬を生き抜く動物たちの営み、その生命感溢れる姿を彷彿とさせてくれ、心にほんのりと灯るともしびのような温かさを与えてくれる。
スケーターが去った後の銀盤に残るトレースもまた、彼らの生き生きとした演技の片鱗を垣間見せてくれるものであるなら、観衆の心にはさらに深く感動と忘れがたい夢のごときその姿が刻まれることだろう。

フィギュア218-2



☆おまけ☆スタンプぺたぺた!
フィギュア218-4

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無量大数 無量大数が降り積もり 春まで鎖(さ)さる 雪国の土


雪国でございますのよ、ホホ、そりゃもうメートルで測るくらいの。ひらひらだの舞うだの鮮やかに歌われる雪ではなく、降るだの積もるだのしんしんもくもく、口開ける気にもならない動詞の雪ですわ。ウィンタースポーツ?やりません。意外とね、そういうもんです。
せめて冬の楽しみに、窓辺に寄る小鳥たちに林檎のもてなし、遠来の渡り鳥に一時の供宴。いやこれも鳥インフルエンザとやらではばかられるようになりました。
でもねぇ、これは溶けるんです。太陽という味方がいます。大変ですよねぇ灰が降られちゃ。一面一色、雪景色に似てまったく異なるあの光景に雪国の雪を使えぬものかと、湖を凍らせて火事を消したスーパーマンのようなことを考えてしまいました。

音の無き 称名のごと雪が降る 冬を慰み 春を言祝ぐ
2011/1/30(日) 午後 3:03 [ 花屋 ]

花屋さま
ご訪問うれしいです。凍れる雪国にお住まいだったのですね。
小鳥らが林檎を啄ばむ風景ももはや昔になってしまったのでしょうか。淋しいことですね。このところ鳥や牛に襲い掛かる厄災は結局、人がもたらしたものだと思いますが、可哀相な話です。
この世を守る正義のスーパーマン、必要かも知れませんね。

雪の声遠ざかりおり野にひそむ獣らの夜に吸われし瞳
2011/1/30(日) 午後 8:12 [ まさきつね ]

こんばんは、まさきつね様。
すすすみません、久しぶりのコメントなのに…。
ついつい先にオマケ動画を見てしまい…ニャンとも魅惑的な光景に、思わず「ハァ~ン」となってしまいました。

ニャンコに飢えてる故と思し召して、何卒ご容赦下さいませ。。。
2011/1/31(月) 午前 0:42 [ モジ ]

雪など10年に1度降るか降らないかという地に生まれ大学入学までと、カナダに渡る前の5年間以外は、雪は積もるがメートル単位ではなく、ひたすら寒い場所(要するに内陸気候)で生きています(苦笑)。勿論今現在雪は積もっていますが、住んでいる所が郊外なので、猫の足跡の代わりに野兎の足跡、裏庭には鹿の、ガスメーターまでに一直線の人の足跡(笑)…猫は寒すぎて(平年の最高平均気温-4℃、寒気団襲来時の最低気温は-20℃)出て来れないのが普通で、自分も雪掻きと買い物以外は、殆ど集中暖房の屋内に引き蘢り状態です(苦笑)。
浅田選手のスケーティングやジャンプは、力みが薄れ、より自然になり、スピードと滑らかさが増しているのが、素人目にも見て取れますね。半月後の4大陸選手権、CBCの放送はないのが残念ですが、つべにアップされるのを期待しつつ、今から楽しみにしています。
2011/1/31(月) 午前 1:14 [ can*dak*ra ]

モジさま
ご訪問うれしいです。
猫に飢えている方には、おいしい動画だったでしょうか。
ひととき和んでいただけたなら、幸いです♪
2011/1/31(月) 午前 1:19 [ まさきつね ]

can*dak*raさま
コメントありがとうございます。
雪は遊ぶには楽しいですが、雪掻き、買い物と生活するには大変ですよね。あったかい部屋で引き籠りのうちの三毛が正解でしょうか。
浅田選手、自然な演技も自信の表れですよね。まさきつねも四大陸が、実に楽しみです。
2011/1/31(月) 午前 1:25 [ まさきつね ]

お久しぶりです。
こちらは雪が降らないのですが、期間限定でしたが人工雪を体験できるドームがあったことを思い出しました。北海道や北陸に住んだことがある私は、雪=楽しいと思えないのですが、雪の後の快晴の日に一人分(時には1匹)だけ足跡がある光景が大好きでした。
スケートリンクでは、小さな子供の練習のためにペンで円や線を氷上に描いてその上を滑らせるので、上手な人の跡を手本にするのは良かったりするかもしれませんね。ちゃんと習ったことが無いのでよくわかりませんが...
2011/1/31(月) 午後 4:00 [ cha ]

chaさま
ご訪問うれしいです。雪の風景は美しいですよね。生活するのは大変ですけれどね。
昔はコンパルソリーがあったので、基礎練習は今よりも厳しかったでしょうね。でも今でも幼いころの練習には、トレースをなぞる基本が欠かせないかも知れませんね。
こうした地道な努力があの美しい演技に繋がっているのだと思うと、やはりどんな仕事も繰り返し演習が大事ということなのですよね。
2011/1/31(月) 午後 5:24 [ まさきつね ]

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