月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

銀釦を拾う

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世界貿易センターの空の果てで
光のひと欠片になった男の物語

「綱渡りするのに理由はないよ」と
彼は言う
「綱渡りは僕の人生
人生はぎりぎりを歩いてこそ
意味があるんだ」

積み重ねてきたものが
いつもすんでのところで
徒労に終わる

当たり前のように暮らしていた場所が
明日はみるみる
瓦礫の山に変わる

十年前 ビルの下の
自転車置き場だったところが 
ブナの樹の公園になってしまったなんて
ざらに聞く話

世界は
ひと握りの天才がつくった伝説と
大勢の人間がうごめく日常が
ひしめきあってる

いつだったか 目覚めた朝に
飲み干した一杯の水が
生きることの意味を教えてくれた
そんな記憶もあるけど

いつもは
遅刻した理由
欠席の理由
出来なかった理由
そんな煩わしい言葉で書類を埋めている
事務机の日々

失われたビルの窓に映る
ブナの樹の間を
ゆき過ぎる春の風に
吹かれて

いつか ニューヨークの街角で
綱渡りの男が落とした
上衣の 銀釦を拾う
夢をみている

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彼等に怨みはないが、何故だか私は容赦しない気持ちになっていた。体を張らない安全博打で遊んでいるような野郎は大嫌いだ。奴らは博打をナメてるが、博打ばかりでなくこの世のいろんなものをナメて暮らしてる。糞、それなら博打で大怪我をさせてやるぞ。
(阿佐田哲也『麻雀放浪記』)


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