月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

冷静と情熱のあいだで


六年使ったパソコンがとうとうご臨終になり、慌てて新しい機種を投入した。

ブログの更新どころかネットも携帯で覗くしか出来ないので、昨晩は焦燥の一夜を過ごし、今朝になってようやく持ち帰りしたパソコンの設定を先程何とか完了して、環境を整えることが出来たが、何しろ使い慣れないので、いちいちがもたもたする。だがさすが新しいだけに、頭脳的な出来は比べ物にならないほど高く、ダウンロードひとつにしても速度が違い、使いこなせばこれほど楽な作業効率はないだろう。

もっと早く買い換えておけばという話になるのだが、おしゃかになった方は旧式のパソコンで、もはや粗大ゴミの域を出ない代物だったが、リアル・フリートモデルのチョコレートをイメージしたデザインは愛着があり、機能的なマイナス点を補う魅力があった。

まさきつねの悪い癖で、仕事に使用する機能重視のツールさえ、時々こうしたデザイン優先の選択に走ってしまう。
携帯電話も同様で、白いINFOBARをこの春まで使い続けたという、常識からすれば実にありえないことも平気でやっている。だが、まさきつね的には、電化製品を十年使うというのはむしろ当たり前のことだったのだ。壊れたら修理して、屑鉄になるまで使う。真空管ラジオかブラウン管テレビか黒電話かというほど、旧時代的な話になって申し訳ないのだが、ひとつひとつのものが使い捨てにならず、カバーを掛けたり、毎日埃を払ったり、身の回りにあるいろんなもののどれもが自分自身の分身のような、子供のような大事な扱われ方をしていた時代が、ほんの少し前には確かにあったのだ。

無論、今の時代の人が全てのものを粗末に、使い捨てのように扱っているという訳ではない。きっと、今の時代にも、ものを大切に自分の大切な友人のように遇している人は大勢いるに違いない。

機械の頭脳を持つパソコンに命はないのだが、扱う人間の魂は宿るような気がする。まさきつねの旧型パソコンも、(高額の投資をして)再生する価値はないと宣告はされたが、何とか近いうちに手を入れて、甦るものなら甦らせてやりたいと思う。


さて、私ごとの報告で恐縮だったが、本題のタチアナコーチの話題へ。

ロシアで人気のIce Ageというテレビ番組の新シリーズが『Лед и пламень Ice and Fire』という名で9月19日からロシアのチャンネル1とウクライナで放送をスタートしたらしい。
フィギュア大国であった筈のロシアの復活は、このたびのジュニアGPSでも空恐ろしいまでに思い知らされたが、こうしたテレビ番組が組まれて高い視聴率を取るのは、やはりこの競技に対する、一朝一夕でなく積まれた深い知識と理解を持つ国民性があってのものだろう。

タラソワ


テレビ番組の内容であるが、18組のカップルが、アイスダンスとフロアダンスを1セットにしてその合計得点で競い合い、何組かが脱落。視聴者投票での復活を含め、最後に勝ち残った2チームで決勝戦をするという仕組みのようだ。
出場者はリトアニア、ウクライナ、ベラルーシ、カザフスタン等々、いわゆるCIS諸国を代表しての国際試合の体裁を持つらしく、以下がその一覧。

Igor Ugolnikov - Elena Berezhnaya
Vyacheslav Manucharov - Anna Semenovich
Catherine Vilkova - Maxim Shabalin
Zara - Anton Sikharulidze
Maria Kozhevnikov - Alexei Yagudin
vetlana Svetikova - Sergei Novitski
Andrei Chernyshov - Margarita Drobiazko
Lisa Arzamasova - Maxim Stavisky
Tash Sarkisyan - Maria Petrova
Alexey Vorobyov - Tatiana Navka
Linda Nigmatulina - Ruslan Goncharov
Ruslan Nigmatullin - Tatiana Totmianina
Sati Casanova - Roman Kostomarov
Denis Matrosov - Irina Lobacheva
Natalia Podolsky - Maxim Marinin
Hope Granovskaya - Petr Chernyshev
Agnia Ditkovskite - Povilas Vanagas
Love Tolkalina - Alexei Tikhonov

シャバリン、ヤグディン、ノビツキーといった名前が入っているあたり、ファンにはたまらないニュースではないだろうか。
ちなみにフィギュアスケートの審査委員長にタチアナコーチ、ダンスの審査委員長はバレエダンサーのファルフ・ルジマトフ(!)、そのほかの審査員のメンバーは毎回変わるとのこと。

お待ちかね番組冒頭、タチアナコーチが踊る『ポル・ウナ・カベーサ』の動画が以下の通り。

☆L&P 1 Tarasova☆

タチアナコーチの考えるタンゴとはいかなるものか、ダンスとは何かを一考させる映像ではないだろうか。内に秘めた情熱、情熱の中の聖性、聖なる冷静さといった幾通りもの側面が交錯する舞踏に、自らの溢れる感情を表出し、魂の欠片を込める。毅然として美しく、そして強い。

「首の差で」勝負が入れ替わる先の見えない人生だけれど、行き着くところは人間誰しもそれほど変わりはしない。ただ人生のゴール地点で振り返ったとき、自らの人生にどれほど誇りが持てるかどうか、それは自分自身にしか分からない。勝負に勝つためには「ずるさ」や「したたかさ」が必要と考える生き方もあるだろうし、競技である以上、もっと頭脳的に戦略を練る必要もあったと捉える考え方もあるだろう。

要はそれぞれの信念に従って生きる姿勢と、生き残るための妥協をどこまで自分に許せるかどうかの違いだ。

それぞれの生き方に対し、それが正しいか間違いかは誰にも論じ得ないのだ。ただ勝負の結果については、一度決着がついたものはそれ以上、変えることは出来ない。だが、結果を受けとめて、その後の人生をどう生きるかはいくらでも変更の利くことだ。

まさきつねはタチアナコーチのタンゴを観て、改めて、浅田選手がタチアナコーチを鑑とし、五輪シーズンを真っ向勝負で闘い抜いた姿勢は間違っていなかったと思った。
それは今にして思えば、浅田陣営側の反省点として、もっとああすればこうすればという、遅きに失した戦術も幾つもあっただろう。しかし、多くの分岐点で浅田選手が下した選択は彼女の生き方から一度もぶれることなく、冷静でかつ情熱的なアスリートの魂に純粋だった。

だからこそ今、タチアナコーチも浅田選手も心置きなく、美しき人生を賛美し謳歌するタンゴの調べに乗って、ライトの当たる舞台で思うがまま踊り飽かすことが出来るのだろう。


浅田選手の『ポル・ウナ・カベーサ』を論じたエントリーはこちら。
『首の差で』


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女子の表現は大別すれば可憐か妖艶、優美か溌剌ということになるのでしょうか。そう考えるとやはり「鐘」は名プログラムですね。常々思っていたのですが、人間いくら歓喜の瞬間でも三回転はすまい(でんぐり返りはしても)、ならばジャンプは表現に邪魔なのか、技術パーツと演技、舞踏パーツに分けねばならぬのかと思ってましたが「鐘」においては、あのジャンプなかりせば、あれだけの怒り激しさは表せなかったと確信しております。勝手に。天才だね。だから浅田さんにはこっそり言いたい、そんなにいい子でいるこたない。人間、恨んだり憎んだり醜い感情を持つこたあったり前で、天才浅田真央ならそんな負の情緒すら芸術表現に昇華しうると、そして氷上の存在においてのみ評価されるべきと、思っております。
2010/9/21(火) 午後 0:52 [ 花屋 ]

調子に乗って妄想。タンゴならばロシェットねえさん、あの夜会巻きをショートカットに宝塚よろしくタキシード姿でにこりともせず踊ってくれたら、(無論ジョークだが)おかま説も出た彼女、そんな噂を逆手に取ってEXあたりで優美な遊びを見せてくれたらファンに大大大をつける。彼女がボンドガールならば誘惑するだけじゃない、敵を叩きのめしそうだもの。
鈴木明子の雄弁な腕にはタイやインドの舞踏が似合う。アジアの美意識はもっと評価されたい。
浅田真央ならいっそ銀盤を月世界に見立てて地上を遊離しますか。6分の1重力も彼女なら表現できる。さすがにかぐや姫の衣装は邪魔そうだから月の兎かな、ああ星の王子様の孤独もいいなあ。妄想が暴走しました。
2010/9/21(火) 午後 5:01 [ 花屋 ]

花屋さま
コメントありがとうございます。
浅田選手も生身の人間ですから、負の感情を持つのは当然のことと思います。ただ彼女の場合、負の感情に駆られても、それを他者にぶつけたり押し付けたり、なすりつけたりしないという点で、花屋さまが仰るような「芸術表現に昇華しうる」天才たり得ると感じます。
ロシェット選手、鈴木選手へのご意見(妄想?ですか。でもかなり楽しい想像ですよね。)もなかなかのものとお見受けします。
ロシェット選手の男装は素敵でしょうね。鈴木選手のいろんなダンス・ジャンルへの挑戦は、まさきつねも大歓迎します。浅田選手の月面世界での演技も良いですね。
フィギュアの舞踏世界を才能ある選手たちがこんな風に、どんどん拡げてくれたらうれしいですね。
2010/9/21(火) 午後 7:48 [ まさきつね ]

まさきつね様
タラソワ先生、素敵ですね。ちょっとした手の動きや顔の角度で音楽を感じさせる…。その精神を真央さんに伝えているんだなあと実感します。おしゃれで粋なタンゴ。人生の深みを感じました。
冷静と情熱のあいだで、見事にバランスをとることができている真央さんのまわりには、先生にしてもお母様にしてもスタッフにしても、やはりバランスをとるのが上手な方が多いのでしょう。
ジャンプの不振を煽るような記事がまたしても出ておりますが、そんなものには紛らわされず、世界選手権を大きな目標としながら、一つ一つの試合に目標をもち取り組んでいく真央さん。その後ろには、大きなタチアナ先生がそっと見守ってくれているのですね。
ロシェット選手のタキシードでのタンゴ、観たいです~~!素敵な妄想に参加してしまいました。
2010/9/21(火) 午後 11:07 [ miho_ann ]

miho_annさま
コメントありがとうございます。
ジュニアGPSはロシアの復活とソチに向けての本気をまざまざと見せつけるものでしたね。ジャンプがどうとか表現力が云々とか、そんな話をしている時代ではなくなりました。マスコミが殊更叩かなくても、ジャンプの矯正が不可欠なことは浅田選手自身が一番よくわかっていることでしょう。もはやキム選手ごときに構って、場外乱闘をしているのもくだらないことだとしみじみ思いますね。
浅田選手には高い目標があります。それをひとつひとつクリアしていくことが、タチアナコーチの待つロシアに近づく一歩だということですね。
2010/9/22(水) 午前 7:39 [ まさきつね ]

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