月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

MAO・イン・ワンダーランド


話題の『アリス・イン・ワンダーランド』を観た。(この後ネタバレご注意。)
☆Alice in Wonderland - New Official Full Trailer (HQ)☆

ティム・バートンの世界観でアリスのワンダーランドが再構築され、ストーリー展開も原作のツボを押さえて、まずは巧くまとめた佳品だった。ただ原作を超えるはちゃめちゃはなく、バートンらしいオリジナリティにも欠けているし、ラストも優等生の模範解答だ。
さもあらん。あくまでディズニー作品なのだから、毒は盛っても病原菌を撒き散らす訳にはいかないのだ。
(穿き古した靴下みたいなジョニー・デップに関してはもう好き好きとしか言えない。厭きたという感慨もあろうし、存分に醗酵した臭味がやっぱりたまらない向きもあろう。)

ところで観る前に気になっていたのは、映画の作品批評で「主人公のミア・ワシコウスカが最後まで可愛く見えなかった」というのがあり、そうなのかと注視していた。結論を言えば、決してそんなことはなく、強いて言えば作品が元々「可愛い」というより「りりしい」というキャラクター設定で作られていたからという理由のためだろうか。

フィギュア50-2

そもそも「可愛い」という感情を相手に強く起こさせるためには、「けなげさ」とか「か弱さ」みたいな要素が働きかける必要性がある。アリスというキャラクターはその点、父親が亡くなって経済的に誰かの保護が必要な状況で、結婚を奨められているというストーリーではあるが、本人全く庇護を求めているような性格の弱さも、恋がしたい結婚したいというような恋愛や結婚依存症の気配もない。
つまるところ、女性が常に男性の庇護下にある英国ヴィクトリア朝の風潮の中で、アリスはあくまで自らの考えで行動し自ら運命を切り開く、先進的できわめて現代的な女性像の象徴なのだ。

そしてワンダーランドの中で、アリスに次いで(凌いで?)存在感ある女性二人、赤の女王(イラスベス)と白の女王(ミラーナ)の姉妹であるが、この二人こそ実は、アリス以上に女性の「可愛さ」を語るにはうってつけのキャラクターなのである。

赤の女王はご存知ヘレナ・ボナム=カーター、バートン作品の常連(で私生活でも二人の子を儲けている間柄)だが、外貌はかの昔『眺めのいい部屋』で魅せた瑞々しい美しさは何処へやらという(特殊メイクとCG加工付きだが)ビッグヘッドの奇天烈さで、ヒステリックかつ複雑な女王の孤独を演じている。

白の女王はアン・ハサウェイで、こちらの見た目はプラチナ・ブロンドに白い肌の見目麗しさだが、唇だけは大きく真っ赤に縁取られ(オバQ?)、両腕をずっと上げたまま地面から一センチ(多分)浮いたままのバレリーナみたいな移動歩行で浮世離れした存在感を表現し、上品な立ち振る舞いの中で、虫を払ったりぺっと唾を吐いたりして時々見せるお下劣さが、カーターに負けない際どい演技を見せている。

赤の女王は最初から最後まで、愛に飢えた切ない乙女根性丸出しである。
彼女のハート型のおちょぼ口は充分お茶目だが、愛を盲信するひたむきさは一種の「可愛らしさ」に通じるものらしく、その点ではアリス以上に人間臭く、少女らしいという強い支持もある模様だ。

白の女王は「誰からも愛される妹」と赤の女王に言われていたが、ビジュアル以外でなぜ愛されるのかという理由は明らかにされてはいない。
だがおそらく、この二人の姉妹は元々、ともに両親や周囲から充分愛されていたのだ。
ただ、姉の方は全てを果てしなく求めたがゆえにもの足らず、妹の方は与えられただけのもので満足していたがゆえに充ち足りていたという違いだけのように思う。
(姉のビッグヘッドはおそらく彼女の妄想の大きさを象徴しているのだろう。)

相手に求める要求が大き過ぎると、相手が応えてくれない場合、愛は疑念へと変化する。
疑念の苦しみから逃れようとすれば、赤の女王は「打ち首」を宣言するしかない。
かくして「愛される」より「怖れられる」女王であることが、彼女のアイデンティティになっていくのだ。必然の結果である。


さて、ここからお馴染みフィギュアの話題に変わるが、まず五輪の女王キム選手。
そのオーラが、六分間練習でも周囲の選手たちを蜘蛛の子のように蹴散らしているなどと言っていた方がおられたが、まあ単純に「滑走妨害じゃッ!(打ち首じゃッ!)」と難癖付けられたくないから避けているだけと考える方が妥当だろう。
オーサー始めキム陣営のやり口は、どう見ても周囲からの愛情や敬意よりも、畏怖心を煽ることで絶対的権威を誇ろうとしていた。

そして、トリノワールド女子の台乗り選手から三位のレピスト選手。
彼女はキム選手とはまた別の意味でジャッジから愛され、欧州勢にメダルをもたらした。
以前の記事で紹介したビアンケッティさんのコラムでも順位に疑問を呈しておられたが、安藤選手やコストナー選手らの台乗りにふさわしいと思われる演技を抑えての結果の裏に、どうしても漂うレフリーらのレピスト選手への偏愛が、PCSの数字をすんなりと受け入れさせてくれないのである。無論、彼女の美しさにも、彼女自身にも何ひとつ過失があるわけではないのだが。

そして浅田選手。
羽根をがしがし地面に突き立てながら歩いていた醜いジャバウォック(化け物鳥)のような、選手たちの努力も辛抱も喰らい尽くしてしまう無法なジャッジとルールに立ち向かうべく、ヴォーバルの剣をかざす戦士のごとくに真っ向勝負の演技でアスリートらしく挑んでいった。

まあ半ば冗談? と受けとめていただきたいのだが、まさきつねがこの三選手にワンダーランドの女性たちの誰をキャスティングしているかは、もはや言わずともお分かりであろう。
(プルシェンコ選手にマッドハッターを…とまでは、チェシャ猫の口を借りないと言えないけどニャン。
「あなたはいかれてる。…でも良いことを教えてあげる。偉大な選手はみんなそう。」)

とりあえずフィギュア界の現状を風刺するがためのひとつのパロディとして、大人の対応で聞き流していただけたら、有り難い。

オーサーコーチは「(ヨナは)ジャッジに愛されている」などと、悪びれることもなくしれっと発言していたが、そもそも、付け鼻や付け顎だらけの胡散臭い連中からのいかがわしい忠誠心によって、赤の女王の無体な君臨が見逃され、ワンダーランドの秩序と平穏がことごとく乱されたのだ。

ジャバウォックは「子供の頃のアリス」の象徴という解釈もあり、この正体不明ながら、映画では赤の女王側に付いていた化け物の首を見事打ち落として、アリスは自立した真の大人の女性へ成長を遂げ、ワンダーランドの平和は取り戻されることになる。

白の女王が最後の裁量で赤の女王に下した罰は、せめてもの赦しか救いの意味もあったのか。
ハートの眼帯をした色男ジャックとともに、ワンダーランドの終焉の日まで手枷で繋がれた拘禁は、お互いに愛の何たるか、その残酷さと傷みもあわせて思い知る甘い煉獄でもあっただろう。


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アリスには全然関係ないけど、アンサイクロペディアのりりしい真央ちゃん…

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たびたびお邪魔します。映画は見ておりませんが、そんな感じなんですね~。そうでしょうねぇ。キムさんは今後ず~~~~~っと彼にへばりつかれる恐れが十分ありそうな感じですね。(同じお国の別の選手に乗り換えるんでしたっけ?)どちらにしても、もうあの人は「選手」ではないのでしょうし、仮に現役を続けますと言ったとしても、もう選手ではなくなっていることに変わりはなさそうですね。すでにオーサーもいったい何の「コーチ」なんだか、という感をぬぐえませんし・・。
日本の選手の多くが本当にアスリートとして戦っていてくれてうれしいです。2002年のW杯のときにも同じように思ったのですが、本当に心から、かの国のことは少しもうらやましく思えません。申し訳ないけれど、ウチのほうがずっとよくってよ!って感じです(笑)。
2010/4/19(月) 午前 1:52 [ pke*k*_pi_n*an ]

pke*k*_pi_n*anさま
ご訪問うれしいです。お気軽にどうぞ何度でもお越しください。
ネタバレ大丈夫でしたか。子連れでも、デートでも楽しめる作品でしたよ。
キム選手がカナダの養女というより、オーサーが韓国の養子になったみたいに、もてなされていますね。竜宮城の浦島みたいで、何だかちょっと不気味です。まさきつねも、ロビイング下手でも日本の方がよっぽど良いと思います。
トヨタなどの企業も金融も、政治も、フィギュア選手に倣ってもう一度原点に立ち返って、もの作りに必要な、誠実な精神を思い出すべきでしょうね。
2010/4/19(月) 午前 8:52 [ まさきつね ]

こんにちは。いつも楽しく拝見しています。
私は最近のテレビが本当に不気味です。韓国ドラマのオンパレード。昼だけならまだしも、今度はゴールデンに進出なんですよね。TBSはいくらドラマで視聴率が低迷しているからって、製作する努力すら
放棄してしまったのでしょうか。どれだけ、在日の力が働いているのか、本当におそろしく感じてます。
2010/4/19(月) 午後 4:13 [ オレンジさるぼぼ ]

kin*ar*u20*7さま
ご訪問うれしいです。
ひと昔前には向田邦子さんや花登筺さんのように、古き良き日本を描くドラマの脚本家がいましたね。ドロドロの人間関係だけでなく、背景に風土や文化がしっかり描かれていました。
今は若い人たちを中心にテレビ離れが進んでいて、視聴者の割合に在日率が高いのでしょうか? それとも放送局そのものに在日資本が多く流れているのでしょうか?
まさきつねはこういった問題に疎くて、あまり良いコメレスが出来なくてごめんなさい。
皆さま、またいろいろご意見お聞かせください。
2010/4/19(月) 午後 5:31 [ まさきつね ]
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