月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

世界選手権女子FSプロトコルを読む 其の弐

mao1.jpg

http://www.isuresults.com/results/wc2010/wc10_Ladies_FS_Scores.pdf

引き続きFSプロトコルを読み解いてみる。

前の論考の最後に述べたように「絶対評価」という看板で行っている筈のISUジャッジであるが、キム選手のスコアだけを見ても、なんともバランスが悪い。
あのジャンプの内容で、TES(技術点)の加点の高さも突出しているが、PCSでも(浅田選手を抜き)8点台が3項目並ぶのでは、心証としてやはり、PCSは演技前から設定されているという捉え方をされても致し方あるまい。

そしてこれは、ジャンプの回転不足をとるかとらないか程度の、コーラの個人的な問題が為した結果ではないことが一番問題なのだ。

有体に言えば、いただいたコメントで「真央ちゃんがほんの少しでもミスしたら…優勝はなかった!!」とあったが、それもありえること。
逆に浅田選手が失敗していない現状でも、キム選手が今回転倒した3Sは五輪では6.35、抜けた2Aは5.25獲得しているのだから、万が一どちらかを成功させていたとしたら、PCS があと1、2点上がるくらいの操作で、キム選手の優勝は当然だったというジャッジ全体が示す統一的な方針が、透けて見えることだ。

この基本方針が傾向としてある限り、特定選手の勝利を前提とする競技の形骸化は必須のこととなる。
空洞化したコンクールに、観衆は何を期待し何を応援せよというのか。
「ジャッジの重責」を云々と言い訳する前に、お偉方は観衆からの(「Hi, Slichs!」も含め)ブーイングの重さを自覚するべきだろう。


さて、解析の続きだがとりあえずFSの順位で1位から11位の長洲選手まで並べてみた。
その後に付記したのが総合順位と総合得点(矢印はFS順位と総合で比較の上下)、それからSPの順位である。

1位 キム選手(130.42)     ↓2位(190.79)SP7位
2位 浅田選手(129.50)     ↑1位(197.79)SP2位
3位 安藤選手(122.04)     ↓4位(177.82)SP11位
4位 ファヌーフ選手(118.04)  ↓5位(177.54)SP8位
5位 コストナー選手(115.11)  ↓6位(177.31)SP4位
6位 レピスト選手(114.32)   ↑3位(178.62)SP3位
7位 鈴木選手(111.68)     ↓11位(160.04)SP20位
8位 マカロワ選手(107.58)   →8位(169.64)SP5位
9位 フラット選手(106.56)   →9位(167.44)SP6位
10位 ヘルゲション選手(105.49) →10位(161.79)SP9位
11位 長洲選手(105.08)     ↑7位(175.48)SP1位

一見したところでは、まずSP順位11位から4位に上がってきた安藤選手、8位から5位のファヌーフ選手、20位から11位の鈴木選手の三人がFSで本領発揮したというところだろう。
逆にSPに比べ、精彩を欠いたのが、レピスト選手、長洲選手ということになるだろうか。
特筆すべきはロシアのマカロワ選手、アメリカのフラット選手だが、これからソチに向けて、ともに多くの若手を抱える国の牽引役となっていくのだろうが、国際経験を積む機会にどれほど恵まれるかで今後の躍進ぶりが変わってくるのだろう。


次に3位以下の各選手のTESとPCSを並べてみた。

63.64 58.40 安藤
61.48 56.56 ファヌーフ
54.87 60.24 コストナー
54.24 60.08 レピスト
58.96 52.72 鈴木
55.14 53.44 マカロワ
53.20 53.36 フラット
54.91 50.56 ヘルゲション
49.04 57.04 長洲


まず安藤選手だが、シーズンベストの演技という荒川さんの解説があったが、それにもかかわらずPCSはGDFの61.12、五輪の61.60に届かず、この差で台乗りから遠ざかった印象がある。
瑕があるとすれば軸がぶれたスピンだが、フットワークの評価でPCS?TRの得点を6点台に下げたかも知れない。
フィニッシュの後で口を開けた歓びの表情が、ファンには感慨深く鮮烈だっただろう。


そして安藤選手とクレオパトラを競ったのがファヌーフ選手だが、「このような挽回を長い間待ってたの。本当に良い感じ。長い間、クリアなフリーをやれていなかったので。」という発言どおり、マイナス評価のないクリーンな内容だった。
PCSが56.56止まりだったのは、いわゆる実績のためか、それとも安藤選手との摺り合わせのためかと推測する。


コストナー選手はルッツを跳ばず、着氷の乱れたジャンプが多かったが、絶対に転ばないという意志を感じさせる内容で、五輪からの雪辱戦を健闘した。
それにもかかわらず、ジャンプ四つに付いたGOE減点が響いて、6位に下がったが「今日の目標は冷静でいること、もっと上手くやれたかもしれないけど満足よ。この結果を受け入れ、シーズンを終えられる。情熱と不安と共に、五輪から立て直す事が重要だったの。」と本人がいたって前向きなのがファンにはうれしいと思う。
来年のワールドに向けて、イタリアが二枠獲得するのに貢献した喜びや、彼氏のアレックス君と過ごすために、拠点にしてきたアメリカを離れ、イタリアに戻ることが報道されている。


そして、以上のFS演技で上回った選手を押さえて、レピスト選手が3位をキープ出来たのは、三回転をふたつ落としてもGOE減点を喰らわないという、ISUご推奨の回避策で演技を終えたためか。
それにしても、五輪のPCSが総合4位のレピスト選手が62.72、19位のコストナー選手が57.04で、今回の世界選手権はFS5位6位(総合3位6位)でともにPCS60を確保しているのから推し量っても、やはりFS3位(総合4位)の安藤選手のPCS58.40はいただけない。
もしSPのPCS順位に倣った(前の記事『世界選手権女子SPプロトコルを読む』参照のこと)というなら、ますます常軌を逸しており、ジャッジ操作が可能という類推を強く印象づけている。


鈴木選手は、織田選手の二の舞かと思わせるSPの出来だったが、そこからFS7位に復活してくるあたり、ポテンシャルの高さ精神力の強さを改めて感じさせた。
ミスを引きずらず、リカバリー出来るのが彼女の真の素晴らしさなのだろう。
ジャンプミスはあったが、TESに比べてPCSの低さはFS1組からのスタートという、あまり納得のいかない理由ゆえだろうか。
だがSlStについた複数ジャッジの+3加点は、きわめて妥当と思う。ちなみに浅田選手さえ、ステップに+3をつけたジャッジは一人だけだ。


ウィアー選手と同じガリーナ・ズミエフスカヤコーチに師事するとテレビで紹介されていたマカロワ選手は、元々両親ともフィギュア選手というサラブレッドらしく、端整な垢抜けた演技で五輪9位と注目を浴びていた。
PCSも五輪53.92とほぼ同じ得点を貰ったのが一番の収穫だろう。


フラット選手は2009年GPSのアメリカ杯で、キム選手と拮抗した因縁がある。FSでTESは60.35と、キム選手の51.18を上回りながら、PCSが55.76と、キム選手の61.52に押さえられSP結果と併せて2位に甘んじた。五輪は8位でFSのTESは59.37、PCSは58.48だったから、やはりアメリカ杯はPCSが恣意的に下げられた印象が否めない。
その因縁返しでもないだろうが、SPではキム選手の最終組入りを阻止して6位に着いた。
だがFSではセカンドの3Tを回避したにもかかわらず、例によって回転不足をとられ、ルッツの抜けもあり9位に後退。アメリカは来年度の枠を一つ失った。


キム選手の直後に滑ったヘルゲション選手。妹もジュニアで活躍し、お母さまがコーチという話が流れていた。キム選手の傀儡じみた演技の後だったせいかもしれないが、伸びやかで真面目な滑りに好感を持った人は多いのではないか。
「北欧の風」という表現はポエム過ぎだと思うが、爽やかさが場内の空気を一新したのは事実で、結果スウェーデンは二枠を獲得した。


長洲選手はこの世界選手権で、天国と地獄を一度に味わった気がする。
五輪の時は「誰がどういう点を出して、どういう演技をしようと関係ない。これは私のオリンピック」と発言して、なかなか純日本製にはない逞しさを感じさせたが、今回のFSは最初のコンボの抜けが中盤以降の演技にじわじわと響いて、どれもこれもDG判定やGOE減点を喰らっている。
SP1位から7位まで下がるとは本人の予想を超えていたようだが、この酷い結果も、現行ルールに従い採点テクニックを駆使した正当なジャッジの為したものだ。
救いは軒並み+3のLSp4で、速さとダイナミズムは浅田選手を凌ぐ真性のポテンシャルを感じさせた。
PCSの五輪からの下げはTES出来からすれば致し方ないが、PCS①SSで7.40という安藤選手以上の高評価を貰ったのも、いずれ浅田選手と拮抗するだろう潜在能力の高さを看取してと思う。


4469819413_00e1c930e2.jpg

EXではすべて忘れて、金メダリストの共演。

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇


ぽちお願いします
にほんブログ村 その他スポーツブログ スケートへ
blogram投票ボタン


まさきつね様、こんばんは。

採点のプロトコル…
スケ連やISUに問合せたり説明を求めたりするためには、
その分析は必須だとは思うのですが、
元来 数字に弱い私には何とも厄介な代物です…( ̄ω ̄;)

『現行ルールにのっとった採点』とはいえ、
ファンや世界中のスケーターが納得できないジャッジというのは頂けません。

普通に考えて。
五輪で失敗した部分を成功させた浅田選手の得点が、
なぜ、五輪よりも低いのか?
―――不可解なDGのせいだというのは明らかですが。

人間の目は機械ではないのですから、疑われて当然です。
廻っているとしか思えない3AをDGするのなら、きちんと説明すべきです。

※すみません…長いので分けます~(^_^;)
2010/4/6(火) 午後 10:31 [ もじ ]

※続きです。

あるブログで、どなたかが、審判の匿名制及びランダムカット廃止と、
試合後に採点についての説明記者会見をもつことを義務付けるべき、と書かれていました。
前者は誰でも考えることだと思いますが、後者はなるほど!と思いました。
クリーンで誰しもが納得できる結果ならば、そんな会見、せいぜい10分で済みます。
でも、今回の五輪や世界選手権のように、
どう考えてもおかしいと思われる結果になった場合は、当然 記者からの質問が相次ぐでしょう。
心ある記者ならば、試合を見届けたフィギュアファンの気持ちを汲んでくれる筈です。

日本のスケ連も、ジャンプの得点や種類の選択よりも、
こういったことについて積極的に発言・提案していけば、
日本だけでなく、世界中のフィギュアファンも後押ししてくれると思うんですけどねぇ。


●追記●
『世界選手権女子FSプロトコルを読む 其の壱』の浅田選手の写真、思わず目を奪われます。
何度でも観たくなる。本当に美しいと思います。
…誰かさんの『顔芸』とは大違いです。
2010/4/6(火) 午後 10:35 [ もじ ]

もじさま
コメントありがとうございます。
プロトコルの数字はあまりお気にされない方がよろしいかと思います。理解したところで、気分が悪くなるだけですから。
普通に考えたら当たり前のことも、通用しないのが今のフィギュア界です。五輪はDG判定が甘く、点が上がり気味だった、ワールドはDG判定が厳しく、点が下がった、以上。…というのが、お偉方の言い分ですから。
ジャッジの匿名性はどう考えても腹の立つ話です。いわゆるスポーツで、覆面でジャッジしている競技が他にありますか。どんな競技でも、ジャッジは名前と誇りを掛けて、判定していますよ。
記者会見も良いアイディアだと思いますが、まず無理ですよね。卵か何かを投げられるのがオチだと、ISUは重々承知しているのです。
本当に守るべきは、ジャッジじゃなくて選手だということに、なぜ気づかないんでしょうかね。
祈りの表情の浅田選手、美しいですね。ラジオカナダの解説者が心を奪われたのも、うなずけますね。
2010/4/6(火) 午後 11:55 [ まさきつね ]
関連記事
スポンサーサイト

Post comment

管理者にだけ表示を許可する

Trackback

trackbackURL:http://maquis44.blog40.fc2.com/tb.php/217-ecf90155
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。