翼の生えた猫
山桃が熟れて
弔いの夏が終わるころ
麦刈り星は静かに森へ還る
銀の月は水面に千切れて
ゆきすぎた恋を
女神の髪の毛に隠す
猫に翼が生えるなら
魚だって足で地面を駆けるだろう
(世界はいつだって平等ではないけど
絶望するほど棄てたものじゃない)
がんじがらめで煩わしかっただけの愛も
一度失くしてしまうと
二度と手に入れ難い星の欠片
やがて乳の川の水脈をたどって
誰もがのちの思いにかえり着くなら
誰もが知らない嘘が答えで
誰もが知ってる答えがまちがいだったと
犀の涙とともに気づくだろう
*********************
あんたがたは前からずっと翼を持っておった。そして今ではあの猫らも翼を持っておる。それのいったいどこが不公平なんですかな?
(アーシュラ・K・ル=グィン『空飛び猫』)
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
- 関連記事
スポンサーサイト