月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

西瓜糖の恋人

注文17


世界がすべて
西瓜糖でできているとしたら
あなたを愛するということは
日がな一日
西瓜を食べているような
ものなのかしら?

あなたの細い首すじに歯を当てると
顎の根が痺れるくらい甘くて
あなたが鎖骨を突き出して
鳥が羽根をばたつかせるみたいに
両肩を背中へ押しやったら
眼の底からテキーラのような酔いがまわるの

名前のない男には
失う物語さえもないのに
忘れられた世界には
思い出す懐かしい味が残っている

西瓜糖油のランタンの灯が消えて
灰色の日差しが窓から入って床にうずくまる
東雲は夕べの星のささやきを繰り返し
あなたはあなたのときめきを語る

いかれた刺客の虎がめざめる朝
西瓜糖で作られた世界は
なおも美しく ざわめきながら
夢みるでしょう

自らをみるものきくもの ふれるもの
(なめて噛んで 食いちぎり)
傷つきつつやさしく接吻して
血を流しつつ なおも語りかける
言葉を失わぬものを

*********************


わたしが誰か、あなたは知りたいと思っていることだろう。わたしは決まった名前を持たない人間のひとりだ。あなたがわたしの名前をきめる。あなたの心に浮かぶこと、それがわたしの名前なのだ。
 たとえば、ずっと昔に起こったことについて考えていたりする。―――誰かがあなたに質問をしたのだけれど、あなたはなんと答えてよいかわからなかった。
 それがわたしの名前だ。
 そう、もしかしたら、そのときはひどい雨降りだったかもしれない。
 それがわたしの名前だ。
 あるいは、誰かがあなたになにかをしろといった。あなたはいわれたようにした。ところが、あなたのやりかたでは駄目だったといわれた――「ごめんな」――そして、あなたはやりなおした。
 それがわたしの名前だ。
(リチャード・ブローティガン『西瓜糖の日々』)


◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

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Comment

says... "No title"
やったったまおにゃ
2011.07.27 12:10 | URL | #- [edit]
まさきつね says... "甘ーい…"
-さま
いかにも「獲ったどー!」って感じのまおにゃですよね。甘ぁーいスイカ、ひとり占めですね。
2011.07.27 14:18 | URL | #- [edit]

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