月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

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窓の下、子どもたちの庭で

フィギュア311-1

窓の下は わたしのお庭よ
そこには あまい あまい花が咲くの
そして梨の木には
わたしの大好きな駒鳥さんが住んでるのよ・・・

フィギュア311-4


芝生の上の テーブルには 
プラムケーキに イチゴがたくさん
緑の芝生は ひなぎくのじゅうたんなのよ
こんなかわいい景色みたことある?

フィギュア311-6

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引き続き、浅田選手のCM関連画像をご紹介。
だがその前に、またしてもまさきつねの妄想劇場をお伝えしよう。

まずは冒頭の詩はイギリス、ヴィクトリア朝時代の絵本作家ケイト・グリーナウェイの作品『窓の下で』』からの引用である。
ケイト・グリーナウェイに関しては、先だっての記事でご紹介したカイ・ニールセンに比べればはるかに著名で、絵本作品は日本でも一般に出回っているのでご存知の方が多いと思う。

ケイト・グリーナウェイは1846年ロンドンに生まれている。風刺画の掲載で名高い英国雑誌『パンチ』などの仕事をしていた木版画家の父を持つ関係で、幼い頃から絵画制作に興味を持ち、南ケンジントン美術学校で学び、画家のアルフォンス・レグロスに師事している。グリーティングカードのイラストなどの仕事を経て、1874年二十八歳の頃に、キャサリン・ノックス作『妖精の贈り物』の挿絵を担当し、初めて本の表紙に自身の名前が刻まれることとなった。

以後、詩作と画才を活かした仕事に就きたいと考えた彼女は、父の友人の彫版師であり印刷業者であったエドマンド・エヴァンスに出会い、彼にスケッチや詩の習作を描いたポートフォリオを見せる。その魅力を認めたエヴァンスは、1878年、彼女の水彩画を木版に起こし、詩と繊細な絵で綴られた絵本『窓の下で』をラウトリッジ社(Routledge)から出版した。
この絵本は初版で十万部を超えるヒットとなり、その名が英国のみならず、広くアメリカにも知られるきっかけとなったようだ。彼女の優雅で可愛らしい子どもたちを描いた作品は、1882年に知己になった美術評論家ジョン・ラスキンにも高く評価され、同時代の絵本作家の中では卓抜した人気を博した。

グリーナウェイの名声を不動のものとしたのは1883年から続いた『暦』シリーズが売れに売れ、経済的な潤沢をもたらしたからではあるが、一方で彼女の模倣をする作家たちが多く現れ、その亜流の氾濫が今日でも彼女の作風に親しみやすさを感じさせると同時に、どこにでもある凡庸なイメージを定着させてしまう結果となった。

ラスキンは純粋に彼女の絵画的才能を認めていたが、「女子供相手の砂糖菓子画家にいれこんでいる」という批判が少なからずあったのは、グリーナウェイ人気がもたらした弊害だろう。実際はラスキンの熱烈な支持と助言により、彼女の画家としての力量は芸術性を増し、1888年に発表した代表作『ハーメルンの笛吹き』に結実した。

ラスキンとの恋愛が取りざたされることもあるが、実のところ、『不思議の国のアリス』の作者ルイス・キャロルなどイギリスでは珍しくない小児性愛嗜好の傾向があったらしい彼が、グリーナウェイの描く少女像に強い関心を持ったことは容易に察しが付くものの、生身の関係についての真相ははっきり伝わっていない。
だが、ともすると限りなく夢のようにエレガントなヴィクトリア朝の美を象徴するグリーナウェイの絵画世界は、時に人工的で作り物めいていると批判され、具象性が足りないという否定的な意見もあったのだが、ラスキンは終始彼女の作品に高い芸術性を認め、その影響が絵画的な完成度と精神的支柱に関わっていたことは間違いないことだろう。

(ラスキンとは切っても切れないラファエル前派の掉尾に位置付ける分析もあるが、似ている部分こそあれ同じ信条で活躍したわけではなく、それにラファエル前派そのものが元々明確な絵画理論を持った芸術運動ではないので、19世紀イギリス絵画一連の流れの中で彼ら同等の評価を得ているくらいにとらえるべきと思う。)

いずれにしても生涯にわたり強い結びつきを保ち続けたふたりは、1900年一月にラスキンが八十一歳で亡くなると、その翌1901年十一月、後を追うように五十五歳でグリーナウェイもこの世を去っている。それはヴィクトリア朝の終焉を告げる二十世紀に入ったばかりの年で、彼女は彼女が生きた時代とともに、彼女が描きたかった「大人が忘れてしまった幸せ」を生きる子どもたちの世界の幕を閉じたのである。

フィギュア311-2


さて、今回も長々と画家の説明をしたが、まさきつねは浅田選手の出演した伊藤ハムとロッテのCM映像から、どことなくこのグリーナウェイの作品を連想したのである。

☆伊藤ハム 朝のフレッシュ「モーニングプレート」 浅田真央 ☆


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果実の実る爽やかな初夏の庭、優しい風が吹き、花々の香りが漂う朝のテーブルにたくさんの子どもたちと集う浅田選手は、明るい楽しそうな笑い声に囲まれて食事をとっている。
さすがにヴィクトリア朝時代のような、おすましで気取った食事マナーとはいかないが、ハムのサンドイッチに美味しそうにかぶりつく浅田選手の様子はいかにもナチュラルであどけなく、微笑ましい。
まあ、グリーナウェイの子どもたちだって、お皿を持って一見行儀よさそうに並んではいるけれど、美味しいパイが目の前で切り分けられたら、きっと各々一番大きいカット目がけて一目散に突進したに違いないのである。

グリーナウェイの挿絵は当時の子ども服のデザインにも多大な影響を与えたというが、英国ののどかな田園風景の中で、ノーブルな衣装を身に付け花に囲まれて遊ぶこどもたちの庭は、今以上に同時代の人々の憧れだったのかも知れない。

伊藤ハムのCMは、もっと現代的で庶民的な子どもたちの誕生パーティか何かを想定しているのかも知れないが、少なくとも大人の入れない天真爛漫な世界で、子どもたち同士が仲良く食事や遊びの同じ楽しみに興じているという世界観で共通している。

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ロッテのCMの方は子どもたちのかわりに、共演がパティシエと民俗楽器の演奏者となっているが、浅田選手の大きなリボンやエプロンのスタイルは、無論ヴィクトリアン朝様式ではないもののやはりどこか優雅で古風なイメージがあり、甘いスイーツの宣伝にはもってこいだと思う。

☆浅田真央(mao asada) ロッテ新CM~タブラ + ディジュリドゥ + メイキング篇☆


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勿論、ヴィクトリアン朝の芸術はただ甘いだけではなく、前にも書いたラファエル前派そしてラスキンが唱えた思想についても、神秘主義や精神主義、秘密主義などさまざまな面を持ち、グリーナウェイの作品も冷静に見れば、決して可愛らしいだけではない子どものいろいろな側面を描いており、ただロマンティックで感傷的な少女趣味に貫かれているわけでも、装飾過多で華やかな絵本というわけでもないのだ。

ラスキンはグリーナウェイの絵画を、子どもを子どものままに、自然をありのままに、その可愛らしさも美しさも醜さも、飾ることなく隠すことなく描いているという点で高く評価したのだ。英国における文化財保護運動、ナショナル・トラストの創始者のひとりでもある彼の思想の根幹もまさにそれにあり、神の創造物である自然のうちにこそ、その不完全さも含め絶対的美を見出そうとする信仰が根底にあった。

グリーナウェイの筆がとらえた子どもたちの世界は、どんな大人でも一度は通り過ぎ、そして思い出さずにいられない懐かしい幼いころへの記憶に直接結びつき、そしてどんな人でもかつて必ずいだいたであろう未来への夢や、初心の思いへ連れ帰る作用がある。

つまるところ、まさきつねがここで語りたかったのは、グリーナウェイの作品を鑑賞する上で最も重要となるのは、その懐古趣味であり、鑑賞者の胸に、古風だが変わらず大切なもの、いつの時代も重んじられるべき純真なものへの限りないノスタルジア、そしていつまでも誰の心にも失われずにある子どもたちの遊ぶ庭への郷愁が揺り起こされるということなのだ。


そして同じように、懐かしいものへ遥かな憧れ、子ども時代への甘くメランコリックな思いが、浅田選手のCM映像を見たときにも染み出てきたことを感じたのである。


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フィギュア311-3



目にみえぬ空のかなたゆく
一わの小鳥になりたい

ただ一度きいたのち
いくたびも思いだされる
歌になりたい

そよ風にゆれる
ゆかの上のしらゆりのかげに
なりたい

すぎたむかしのすべてに値する
愛のことばのこだまになりたい

わすれはてて二度と
生まれこぬ希望の
その記憶になりたい
(クリスティナ・ロセッティ『のぞみ』)


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