月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

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アイリスの荒野

○注文41-1


ジャーマンアイリスの咲き群れる
路肩の植え込みに
ひととき 降りそそぐ雨にさえ
こころを寄せることができない

やさしく 頬をぬらすものにさえ
こころを傾けることができない

しぐれた胸は たわいのない夢ばかり見る
やさぐれた思い出ばかりなぞっている

少しの間だけ さよなら なんて
妙に気どったことばひとつ残して
リングに上がったボクサー

さよなら なんて
永劫の旅人でさえたどりつけない
さびしさがつむぐ物語なのに

今夜も 憎しみに及ばない
情に ノックアウトされて
セコンドの投げたタオルが
床に落ちるまで

ジャーマンアイリスの茎のまがりに
したたる雨粒のつめたさに
消えてゆく人の影を
赦しのように
恋いこがれる

*********************


新次はリングに上るとガウンのままで観客に挨拶した。
白いガウンの背には十七の星がマジック・インクの赤で記されてあった。十七というのは、彼が今までに倒した相手の数である。もし、今日勝てばまた星が一つ増えることになるだろう。この彼のガウンの星条旗から連想して彼のことをアメリカン・ボーイと呼ぶ記者もいたが彼は一向に気にとめなかった。彼にとって試合は人生の燃焼だったにしても「勝利」はただのデザインにすぎなかったからである。
…拳闘の世界では「一番憎んだもの」にチャンピオンという称号が与えられる。
…憎しみ一つ習得できぬ男がどうしてあの群衆を、かきわけ生きてゆくことが出来るものだろう。
(寺山修司『あゝ、荒野』)


○注文41-2


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