月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

天使は夢見る

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エスキスは2005年の頃、モリコロパークのアイス・ショー宣伝のためにテレビ出演したときの画像から。
髪はエクステンションによるセットだったのだろうか。くるくるの巻き毛が「お蝶夫人」」かと思うくらい、華やかで女の子らしい。
グレーのワンピースはこの頃の一張羅だったらしく、あちこちのお出かけに着用している写真が残っている。

豪華で愛らしい髪形にあわせて、お人形のような雰囲気で描いてみた。


さて、前のエントリーから続きの話になるが、まだジュニアに在籍しながら、浅田選手の怒涛の進撃が始まったのは、2004年-2005年シーズンからと言って良いだろう。
ジュニアグランプリシリーズは参加した三戦すべてに快勝し、華々しいジュニアデビューを飾った。

このシーズンのSPは『虹の彼方に 映画「オズの魔法使い」より』、FSはロッシーニとレスピーギによる『風変わりな店』で、振付はともに正統派といわれるリー=アン・ミラー、若い選手には似合いの可愛らしい、スタンダードなプログラムを仕上げてくるという評判通りの作品だ。
(とはいえ、よく言えばどんな選手でも滑り込みが難しくなく、見た目に馴染みやすく分かりやすいけれども、悪く言えばありきたりで、工夫がない…という感想が一般的だろうか。表現力不足の若手向きということなのかも知れないが、浅田選手も彼女の振付はこのシーズンだけだった。)


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☆Mao ASADA 2004 Jr.GPF SP in Helsinki☆

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【音源】ジョン・ウィリアムズ『Hollywood Sound』
4. The Wizard Of Oz - Fantasy For Orchestra


EXの方はこれまで通り、山田コーチと樋口美穂子さんによる振付で、『ピック・ユアセルフ・アップ ミュージカル映画「スイング・タイム」より』というジャズ・ナンバー、可愛らしいスカートだけでなく、黒いパンツによる演技もボーイッシュな魅力があって、新鮮だった。

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☆Mao Asada - 2005 Junior Worlds Ex - HQ☆

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【音源】ナタリー・コール『スターダスト』
15. ピック・ユアセルフ・アップ

【2004年-2005年シーズン】
2004年 ISUジュニアグランプリ スケートロングビーチ 1位(2004年09月09日)
2004年 ISUジュニアグランプリ ウクライナ記念1位(2004年09月30日)
2004年 第21回西日本フィギュアスケートジュニア選手権 2位(2004年10月29日)
2004年 第73回全日本フィギュアスケートジュニア選手権 1位(2004年11月20日)
2004年 ISUジュニアグランプリファイナル 1位(2004年12月02日)
2004年 第73回全日本フィギュアスケート選手権 2位(2004年12月24日)
2005年 第25回全国中学校スケート・アイスホッケー大会 1位(2005年02月05日)
2005年 平成16年度知事賞争奪愛知県フィギュアスケート選手権 1位(2005年02月19日)
2005年 2005年世界ジュニアフィギュアスケート選手権 1位(2005年02月26日)
2005年 第41回中部日本フィギュアスケート選手権 1位(2005年03月25日)


以下が、全日本の結果。

1位 安藤美姫(SP3位FS1位)
2位 浅田真央(SP4位FS2位)
3位 村主章枝(SP2位FS3位)
4位 澤田亜紀(SP6位FS5位)
5位 北村明子(SP9位FS4位)
6位 中野友加里(SP7位FS6位)
7位 恩田美栄(SP5位FS8位)
8位 浅田舞(SP8位FS7位)
9位 村主千香(SP11位FS9位)
10位 宮本亜由美(SP10位FS12位)
棄権 荒川静香(SP1位)

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浅田選手はこのシーズン、出場したすべての大会で台乗りし、そして全日本のシニア大会ではついに安藤選手に次ぐ二位という好戦績を残した。じわじわと新旧交代の波が立ち始めた頃でもあっただろう。
一方で、トリノ五輪出場が選手たちの念頭に浮かび始めた時期でもあり、世界選手権や四大陸選手権への派遣を賭けて、どの選手も想像以上にしのぎを削っていたことも確かだ。

浅田選手には年齢制限という、然もありなんとして最も理不尽な壁があり、飛び抜けた実力、才能からすれば五輪出場に一番ふさわしい立ち位置にありながら、端から蚊帳の外という誰もが何とも腑に落ちない状況に置かれていた。
ただ、規則で出られないなら仕方がないという、いたってシンプルな結論を誰よりも早く呑み込んでいたのが彼女自身であり、そして、それだからといって競技する上では一切そのことに左右されないという、当然のようだが常人にはなかなか割り切れない境地に達していたのも、実はすごいことだったと思う。

人間は誰にでもやるべきことがあり、そして同じようにやってはならぬことがある。

常人の多くはそれに気づかない。いや、気づいていたとしても、ついやるべきことをせず、やってはならぬことに手を出してしまう。
そして、そんな気持ちへ駆り立ててしまうのが、怠け心だったり、強欲心だったり、虚栄心や傲慢や嫉妬、猜疑心といった人間の心の奥底に潜む感情や欲望で、弱いこころをつい悪行へと傾けていってしまうものなのだ。

誰もが浅田選手を「天使」だと思うその根拠は、実は彼女が、誰にでも出来ないことをやる神の奇跡のような人間だからではなく、ごく自然に人として当たり前のことをやり、やるべきでないことをやらないという良識をごく普通にわきまえているからなのだ。

それは姉の舞選手も同様で、姉妹はそれぞれ常に、自分が果たし得る最善の行動を選び、精一杯、自分がなし得る最善を尽くす。
いつの間にか競技生活に終止符を打ち、アイス・ショーでしかスケートを披露することがなくなった舞選手だが、競技者として華々しいキャリアを積んでゆく妹を前に、自分の心中に渦巻いていただろう迷いや懊悩は一切表に出すことなく、縁の下の力持ちのように浅田選手のサポートに徹する役回りに転身し、どんな時も節度をわきまえ、分をはみ出すことがない。

浅田選手は自分を支えてくれる家族を「チーム浅田」と呼んでいたそうだが、家族全員の結束が固く、しかもその結束が打算や妥協によるものでなく、深い愛情と信頼、そして思いやりで成り立っているという、ごく普通だがなかなかに難しい人間の道理を貫いているゆえの、姉妹の在り方なのだろう。

天使のような姉妹は、トリノ五輪を目前にして、マスコミや一般大衆からアイドル以上の注目を浴び、偏見や欺瞞に充ちた好奇の目に曝されながら、淡々とそれぞれが自分のやるべきことを熟し、やるべきでない行動や発言を慎み、自分を律し続けてきた。

アルトゥニアンコーチも驚いたという、一見弱々しい筋肉しか持たないふたりがなぜ奇跡的なジャンプを跳べるのか、その秘密は彼女らの嫋やかな身体の下に、日々の練習によって培われた基礎体力の鍛錬があり、そして必ずできるという信念があり、努力は報われるという、実に地道で古風な日本的美徳が根付いているからだろう。

無論、努力や勤勉だけで必ずしも結果が出せるという訳ではない。

切磋琢磨の方向性が間違っていたり、機を見る直観力がなかったりで虚しく挫折を味わう場合もあれば、逆に、稀な幸運で労せず功を得るという場合だってあるだろう。
それでも基本的に日本人は、実直で勤勉な積み重ねを何よりも尊ぶし、たとえ即時の成果に達しなくても、長い人生の中において流された汗が無駄になるとは決して考えない。

浅田姉妹のオーラに滲む美しさ、清潔感は、この精神的な透明感に育まれたものだし、その自分にもひとにも誠実に、こつこつと精進を重ねる生真面目さは、とりもなおさず「チーム浅田」のご両親が娘たちに授けたものなのだろう。

天使のような輝きと、その根気よく熱心に取り組む努力によって少女たちは世界に羽ばたいていった。

彼女たちの背にある見えない翼は、労せず与えられた天賦のものではないのだ。
絶え間ざる日々の辛苦、人知れぬ悪戦苦闘がもたらした祈りと希望の羽根なのである。


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世界が私を愛してくれるので
(むごい仕方でまた時に やさしい仕方で)
私はいつまでも孤りでいられる

私に始めてひとりのひとが 与えられた時にも
私はただ世界の物音ばかりを 聴いていた

私には単純な悲しみと喜びだけが 明らかだ
私はいつも世界のものだから

空に樹にひとに 私は自らを投げかける
やがて世界の豊かさそのものとなるために ……

私はひとを呼ぶ すると世界がふり向く

そして私がいなくなる
(谷川俊太郎『世界が私を愛してくれるので』)


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Comment

ホビット says... "舞さん"
こんばんは。今回、舞さんについて、暖かな目線で舞さんを語っていらっしゃることにうれしくなりました。
昨年夏のThe Iceで、舞さんの滑りの美しさを久しぶりに目にしたとき、もし、舞さんが、真央さんと姉妹でなかったら、どんな選手になっていたのだろうと考えてしまいました。そして、その後の、マラソンに挑戦する様子や、テレビでのお仕事を見るにつけ、選手としての舞さんがどうであったか確認したくなり、ネットで巡ってもみました。体の美しい使い方、もって生まれた線の美しさなど、誰にも太刀打ちできないものを備えた選手でしたね。
昨年のショーでは、ジャンプなどはなかったように思いますが、アティチュードのポーズで、すーっと滑っていく舞さんの姿が目に焼き付いてはなれないのです。あの美しさは格別でした。
自らをアーティストと語ってしまう残念な選手は意外に多いのですが、本当のアーティストは決して自分のことをアーティストとは称しないと、姉妹を見ていてつくづく思うのです。
2013.06.16 21:32 | URL | #- [edit]
まさきつね says... "かけがえのないもの"
ホビットさま

ご訪問うれしいです。
舞さんや太田選手のように、競技から離れても美しいスケーティングで魅せてくれるスケーターはいますね。
アーティストだのクイーンだのと演技手が自称しなくても、観客は一番美しいものは何か、芸術的眼福とは何か、よく分かっているものです。

THE ICEでいつも浅田選手と一緒に見せてくれるペアは、ほかのどこでも味わえない美しさがありますよね。こうした、かけがえのないものの価値をもう少し有識者たちが世に知らしめて欲しいものですね。
2013.06.18 00:40 | URL | #- [edit]

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