月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

シークレット・ガーデンの物語

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今回はまず、シニアデビューとなった2005-2006年シーズンの戦績から。

【2005年-2006年シーズン】
2005年 ISUグランプリ カップ・オブ・チャイナ 2位(2005年11月03日)
2005年 ISUグランプリ トロフィー・エリック・ボンパール1位(2005年11月17日)
2005年 ISUグランプリファイナル(東京) 1位(2005年12月16日)
2005年 第74回全日本フィギュアスケート選手権 2位(2005年12月23日)
2006年 2006年世界ジュニアフィギュアスケート選手権 2位 (2006年03月06日)
2006年 ジャパンオープン2006団体優勝 女子FS1位(2006年05月14日)

このシーズン、浅田選手のプログラムはSPが「カルメン」FSが「くるみ割り人形」となったが、シーズン直前のインタビューに興味深い記述がある。以下抜粋。



―― もっと滑りたいんだね!ところで今年のプログラムは「ロミオとジュリエット」だそうですが。
真央 そう、フリーが「ロミオとジュリエット」。
ショートはえーと、曲の名前はわからないんだけれど日本の人の音楽で、前に滑ったクスコみたいな曲(01-02&02-03シーズンのフリー「インカダンス&アンデス」。全日本選手権初出場の時のプログラム)です。ちょっと雪の精みたいな……。振付けはリーアン・ミラー先生。(ウィキの曲名は「スノーダンス」となっている)




ともに幻のプログラムとなってしまったが、『ロミオとジュリエット』に関しては、プロ転向後でも構わないからいつか踊ってほしいものである。(ジェフリーや小塚選手とのペアでも良いニャ。)

『スノーダンス』については実際に振付があり、2005年7月30日に開催された『野辺山サマーフェスティバル・オン・アイス2005』で一度だけ演じたが、音楽も馴染みがなく、曲の解釈などかなり難しい内容だったようで、あまりの評判の悪さゆえにお蔵入りとなってしまったそうだ。

インカダンスのようなフォルクローレかと思っていたが、テレビの旅番組『都のかほり』の中でBGMとして使用されていたものと同じ曲だったようで、音源を調べてみると、Uttara-Kuru(ウッタラクル)というちょっと変わった日本人ユニットによる、東洋風アレンジの効いたインストゥルメンタルだった。

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☆Uttara-Kuru: Winter Dance☆

【音源】ウッタラクル『風 EAST WIND』より3曲目

1. FLOWERS,BIRDS,WINDS&MOON(PROLOGUE)
2. WINGS OF THE EAGLE
3. WINTER DANCE
4. FIRST IMAGE
5. NEYUKI
6. WOODEN SHIP
7. SECOND IMAGE
8. OUR LIFE
9. NIIGATA OKESA
10. THIRD IMAGE
11. FALLING THROUGH A CLOUD
12. AIZU BANDAISAN
13. FLOWERS,BIRDS,WINDS&MOON(EPILOGUE)


Uttara-Kuruに関しては大した情報もないのだが、コンポーザーでアレンジャーの京田誠一とプロデューサーの吉岡一政の二人によるユニットということで、「ウッタラクル」とは、仏教用語でシャングリラ(理想郷)と同じ意味を指すらしい。
ダンス系のアレンジに、仏教的なイメージを喚起するお経や民謡をかぶせ、尺八や三味線、ピアノといったメジャーな和洋楽器以外にも篠笛という竹の横笛や、インドの打楽器タブラなどを使用して、東洋的な民俗音楽のイメージに近づけているのだろう。

題名が本来の『Winter Dance』から、浅田選手の「雪の精」というイメージ変換が作用したのか『スノーダンス』と変えられてしまったため、間違った曲名で長く伝わることとなった。

CDの曲解説では「焚き火の周りを踊っている村人たちのイメージ」ということだが、浅田選手の雪の連想のように、竹林を渡る冬の風や雪の舞う山里なども想像させる旋律である。
だが確かに、フィギュアスケートの選曲としては斬新すぎ、それこそ日本や東洋的なものを表現したいと考える男子選手(カナダの選手とか好きそうだニャ)がストイックな演技を見せるにはぴったりかも知れないが、やわらかくて可愛らしい浅田選手のような若手にはあまりにも方向性が違い過ぎる感がある。

当時の山田コーチにインカダンスのようなフォークロア音楽嗜好があったのか、もしくは振付師のミラーがこうした東洋的な楽曲を好んでいたのかも知れない。

音源の話が出たので、ついでに記載しておこうと思うが、SP『カルメン』の音源は「クリスティーナ&ローラKristina & Laura 」という美貌で知られるチェロとヴァイオリンのデュオ・グループがピアノのジョン・ノヴァチェックと組んでトリオとして活動したアルバム『パッション』から選曲した、ピアノ三重奏版の『カルメン組曲』である。


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【音源】クリスティーナ&ローラ『パッション』より11曲目

1. ニューシネマ・パラダイス(モリコーネ)
2. 小組曲~第1曲 小舟にて/第4曲 バレエ(ドビュッシー)
3. 学生王子のセレナード(ロンバーグ)
4. チャールダーシュ(モンティ)
5. 「はかなき人生」~スペイン舞曲第1番(ファリャ)
6. トッカータ,アダージョとフーガBWV564~アダージョ(バッハ)
7. 妖精の踊り(ポッパー)
8. ミュージカル「レ・ミゼラブル」~オン・マイ・オウン(ショーンバーグ)
9. 愛の喜び(クライスラー)
10. タイスの瞑想曲(マスネ)
11. 「カルメン」組曲(ビゼー)
12. メリー・ウィドウのワルツ(レハール)
13. 「カヴァレリア・ルスティカーナ」の間奏曲


不評の『スノーダンス』に代わるSP曲を急遽探して、山田コーチと樋口美穂子さんがシーズン・インに間に合うよう振付をしたものだろう。

FSの『くるみ割り人形』についても、ローリーの振付はかなりぎりぎりになって決まったもののようで、日ごろからバレエのレッスンを積み重ねていた成果が役立ち、音楽の解釈や振付を素早く呑み込んで、インまでの短期間で準備を整えることができたようだ。


『くるみ割り人形』については、過去記事ですでに詳細を解説しているので、そちらを参照されたい。

『空中庭園の散歩 其の伍 胡桃のファンタジー』
『シャボン玉ははじけた』

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『くるみ割り人形』の音源は名盤として有名なゲルギエフによるもの。

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【音源】ワレリー・ゲルギエフ指揮『くるみ割り人形』

1. 作品71 2幕のバレエ 序曲
2. 作品71 2幕のバレエ 第1幕 第1場 1.クリスマス・ツリー
3. 作品71 2幕のバレエ 第1幕 第1場 2.行進曲
4. 作品71 2幕のバレエ 第1幕 第1場 3.ギャロップと両親の踊り
5. 作品71 2幕のバレエ 第1幕 第1場 4.踊りの情景-ドロッセルマイヤーの贈りもの
6. 作品71 2幕のバレエ 第1幕 第1場 5.情景-グロスファターの踊り
7. 作品71 2幕のバレエ 第1幕 第1場 6.クララとくるみ割り人形
8. 作品71 2幕のバレエ 第1幕 第1場 7.くるみ割り人形とねずみの王様の戦い、くるみ割り人形の勝利、そして人形は王子に姿を変える
9. 作品71 2幕のバレエ 第1幕 第2場 8.クリスマス・ツリーの中で(冬の松林)
10.作品71 2幕のバレエ 第1幕 第2場 9.情景と雪片のワルツ
11.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 10.お菓子の王国の魔法の城
12.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 11.情景 クララと王子くるみ割り人形
13.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 12.特徴のある踊り(ディヴェルティスマン) a.チョコレート(スペインの踊り)
14.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 12.特徴のある踊り(ディヴェルティスマン) b.コーヒー(アラビアの踊り)
15.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 12.特徴のある踊り(ディヴェルティスマン) c.お茶(中国の踊り)
16.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 12.特徴のある踊り(ディヴェルティスマン) d.トレパーク(ロシアの踊り)
17.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 12.特徴のある踊り(ディヴェルティスマン) e.葦笛の踊り
18.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 12.特徴のある踊り(ディヴェルティスマン) f.道化者の踊り
19.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 13.花のワルツ
20.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 14.パ・ド・ドゥ a.イントラーダ
21.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 14.パ・ド・ドゥ b.ヴァリアシオン I(タランテラ)
22.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 14.パ・ド・ドゥ c.ヴァリアシオン II(こんぺい糖の精の踊り)
23.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 14.パ・ド・ドゥ d.コーダ
24.作品71 2幕のバレエ 第2幕 第3場 15.終幕のワルツ-アポテオーズ(グランド・フィナーレ


チャイコフスキーを演奏させたら文句なしに第一級の定評があるプレヴィン盤もあるが、ワルツの美しいメロディーとドラジェの可愛らしいメロディーを効果的に対比させるには、ゲルギエフのチャーミングな演出の方があっているだろう。

使用した部分は19曲「2幕のバレエ 第2幕 第3場花のワルツ」22曲「2幕のバレエ 第2幕 第3場こんぺい糖の精の踊り」7曲「2幕のバレエ 第1幕 第1場クララとくるみ割り人形」から鐘の音のみ、23曲「2幕のバレエ 第2幕 第3場 パ・ド・ドゥ d.コーダ」である。

文字通りバレエ『くるみ割り人形』が初演された本場、マリインスキー劇場管弦楽団(旧称キーロフ管弦楽団)による演奏というのがうたい文句。無論時代が違うのだから、同じ演奏という訳ではないだろうが、それでも目の前にバレエの場面が音楽絵巻のように浮かんでくるような、重層的でダイナミックなゲルギエフの指揮が、チャイコフスキーの音楽の端々にある抒情的な温かさ、ドラマ性をもったリズム感を余すところなく伝えてくる。

音源は大抵の場合、振付師が用意するのだろうが、どの曲のどの部分を使うかによって、楽器やアレンジがまったく異なり、同じ音楽でも全然違う印象になる。
特にフィギュアの場合、今のところ競技用にヴォーカリーズは禁止となっているので(これも近年は何だか曖昧で、かなり怪しい場合もあるが)、楽器独奏にするかオケ盤にするか、あるいはインストかサントラかなどそのあたりも振付師の腕の見せ所なのかも知れない。

浅田選手の場合、ジュニアからこのシニアデビューの若手時代は、大体どのプログラムも三部構成になっており、音楽もそれにあわせて大体三つの楽想を組み合わせ、曲調が大きく変化する部分で緩急をつけた振付というのが演技構成の定番だった。

ジャンプによる疲弊も軽減させる小休止になるし、劇的な場面変換も想起させ、『くるみ割り人形』の有名な「ないしょだよ」のように印象的な仕草も各処に盛り込めるという点で、踊りや細かなステップに不慣れな若手のうちはこうした振付師による工夫が、表現力や演技構成の採点を上げるにはかなり効果的だったと思う。

実際、現在の競技現場でも、若手ではなくとっくにベテランの域に入った選手の多くも、このような巧妙な手管は当然のように駆使しているし、時としてはこういった振付師の演出過多ばかりが目立ち、肝心のステップやトランジションは「スカスカ」と揶揄されることも多いが、振付の巧みな構成に惑わされて選手の表現力や演技力があるだのないだの、ジャッジやメディアの側が陣営の妙な誘導作戦に踊らされて、まったく腑に落ちない採点基準や風評がまかり通ったりするから、実に困った話だ。

採点競技の弱点と言えなくはないが、選手の演技が巧いのか、振付師の演出が狡猾なのか、ジャッジのプロなら巧緻な罠に惑わされることなく採点して欲しいものだが、それでなくとも、一般観衆も含め誰もが納得のゆくスタンダードな数値的判定基準を、演技構成点においてもしっかり定めるべきだと思う。

浅田選手に関して言えば、彼女はタチアナコーチが振付に参加し始めたあたりから、単純な三部構成による音楽のメロディー変化や、小手先の手振り身振りによる演技表現に頼るのをやめ、全身を使う舞踏的な表現や演技姿勢のヴァリエーションを増やし、楽曲の旋律や音色の僅かな変化も細かな身体の動きで拾って、スケーティングの本質的な美しさやステップのリズミカルな華やかさだけで魅了できるように、身体的造型そのものを磨いたのだ。

『くるみ割り人形』のどこかきらきらした世界観には、あどけない少女の溌剌としたジャンプと無邪気な仕草でも充分だったかもしれないが、自分が出場できなかったトリノ五輪で活躍するベテラン選手たちを応援している中で、これから自分自身がさらに目指していくべき境地、補っていかねばならないスケート技術が何か気づいていったのかも知れない。

勿論、わずか十五歳の彼女を世界一たらしめたその魅力、スケーターとしてのポテンシャルの凄さ、勢いのあるジャンプの見事さといった、表現力以外にも彼女の若さと才能がもたらした演技の醍醐味は、それはそれで評価されるべきだろう。

だが、夢のような世界でいつまでも甘い栄光の味に浸ることなく、厳しい勝負の世界でもまれつつもスケートそのものの楽しさ、挑戦する喜びと結果を噛み締めるほろ苦さを味わうことで成長していった、ひとりの少女の傷だらけの青春、その苦難の軌跡の方が、彼女が青春のごく入口で打ち立てた輝かしい金字塔以上の価値があることを、多くの観衆は気づいているだろう。


ここから、『くるみ割り人形』の画像をこのシーズンの順を追ってご紹介。

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中国杯は荒川選手を抑えて二位。
『浅田真央15歳』の中で、「スルツカヤを意識するのはまだ早い」と彼女自身考えていたと後に打ち明けているが、実際まだこの当時は、自分が台乗りすることが他のベテラン選手たちにとって何を意味するか、中学生の少女には分かる由もなかっただろう。

良くも悪くもオリンピック・イヤーを意識せざるを得ないシニア選手たちにとって、五輪出場のポイント重ねのため、結果が最も重要だった。
ところが、そのプレッシャーのない浅田選手はファイナル進出を目標にしながらも、ノーミス演技やジャンプの成功を最大の喜びとして、頑張りのモチベーションに変えることができたのだから、ベテランのライバルたちからすれば、さぞかし苦いものを感じざるを得なかったことと思う。


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エリック杯はコーエン、荒川選手を抑えてついに優勝。三回転や三連続の高難度ジャンプを軽々と決める浅田選手は、当時、ジャンプに関してひとり別次元の闘いをしていたと周囲の感想にある。

確かに、大舞台での緊張のためか転倒やパンクが珍しくなかった女子の演技の中で、初めからとてつもなく基礎点の高いジャンプ構成を掲げ、それを楽々とクリアして絶対に転ぶ様子をかけらも感じさせない彼女の演技は、まるで人工的に編集された映像でも見ているかのように整然として、常に完璧(ノーミス)という印象を観衆に与えた。

そして何よりもシニアデビューしたばかりで、年上の選手たちに交じって気後れすることも、逆に出しゃばりすぎることもなく、飄々として自分の演技と結果に集中しているその不思議な存在感、無邪気さと残酷さを併せ持っているような、あどけない天使のような佇まいに、誰もが驚嘆し、また魅了されたのである。


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GPファイナル進出が決まった時の画像。


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常勝の女王スルツカヤを抑え、ファイナルでも優勝。
SPもFSも一位という、誰もが文句のつけようがないぶっちぎりの成績である。

エリック杯が終わった直後には、ファイナルではフリーで3Aを二回組み込むと話していたのを、ジャンプの調子やSPの結果からそれを回避し、フリップジャンプに変更した上で、すべてのジャンプを成功させての結果だった。


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GPファイナルの結果は予想以上に、国内の真央人気に拍車をかけた。
実力、才能があるにもかかわらず五輪への出場が叶わないという理不尽な状況が、それにさらに追い打ちをかけたように思う。

(もしかしたら、何がしかの組織的な温情やルール変更で浅田選手が五輪に出場していたら、その結果如何ではこれほどの長期に渡るフィギュア人気や真央人気は望めなかったかも知れない…のだろうか。
今となってはすべてが推測の域を出ないが、トリノ五輪が浅田選手の絶頂期として認識されなかったことがかえって、彼女を数年後、質実ともに充実したアスリートに変貌させ、人気や名ばかりではない身体芸術の表現者として飛躍させたのではないかという気がする。

ボジョレ・ヌーボーの爽やかな酸味は、葡萄そのものを口にするようなフレッシュな味わいがあるけれど、長い間熟成させたワインの複雑で深い飲み口は、たとえようもなく魅力的なものだ。
人生もまた然りで、すべてが望みどおりとはいかない故に、得られたわずかなものが美酒と感じられるのかも知れないが…。)


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GPご褒美のエアロ。日本で(あるいは世界でも)一番有名なトイ・プードルの名前になってしまった。

飼い犬の名前さえあっという間にニュースとして日本中に知れ渡ってしまうほど、短期間でその一挙一動に誰もが注目する存在になってしまったスケーターはこれまでにいなかった。
フィギュア人気に関しては、トリノで金メダルを獲った荒川選手によるものも多いと思うが、個人的にアイドル並みもしくはそれ以上の爆発的な人気をお茶の間で博したのは、浅田選手が最初でおそらく最後だろう。
不思議なのは、彼女はスケーターであること以外は、芸能人どころかごく一般の同世代の女の子たち以上に世情に疎く、流行のものやさまざまな情報にほとんど興味を持たず、世間ずれしていないということだ。
「純粋で、愛らしくて、まるで赤ちゃんのよう」とライターの宇都宮さんは書いていたが、その印象はおそらく当時の彼女の本質そのままだっただろう。

特に彼女がフィギュア界の籠の鳥で、外界から隔離されていたという訳はないのだ。むしろそのプライベートの大半はメディアを通じて多くの人間に筒抜けで、ともすれば根掘り葉掘り聞いてくる報道陣に取り囲まれ、何かにつけしんどい思いをしたことだろうと思うが、彼女自身はそんなことは一切億尾にも出さず、それどころか、常にあっけらかんといろんなことに無頓着で、ただひたすらスケートが出来れば幸せというように突き抜けている。
彼女自身は、何も秘密なことなどないというように、すべてあけっぴろげなのだが、その奇跡のような演技、高難度のジャンプをどうしていとも簡単に熟してしまうのか、誰もがその謎を知りたくてたまらなくなる。
ところが、彼女は本田選手が「あのすごいジャンプはどうやったらとべるの?」と訊ねたとき「よいしょ、って跳びます」と無邪気に答えたように、無論はぐらかすつもりなど毛頭ないのだろうが、無防備で素朴な自分の手の内を隠そうともしないのだ。

罪のない天真爛漫さは、時としてそれを失ってしまった人間には限りなく嫌悪や妬みの対象となってしまうが、十五歳の世界チャンピオン誕生の原動力になったのは、やはりこの、年配者に対して物怖じも要らぬ遠慮もせず、純粋なパワーと懸命さで押し切ってゆく若さ、そのピュアな汚れのなさに尽きるのだろう。


シークレット・ガーデンの秘密は皆に暴かれていた。
誰もが知っている庭に棲む天使は美しい夢を見て、その光を求めただけだ。

そして天使は、いつか誰もに美しい庭の光を届けたかっただけなのだろう。


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こころが落ち込んで、疲れきってしまったときも
苦難に見舞われ、重い試練を与えられたときも
僕はただ静かにここで待とう
あなたがそばに来て、僕に寄り添ってくれるまで

あなたが僕を奮い立たせてくれるから、山の頂に立つこともできる
あなたが僕に勇気を与えてくれるから、嵐の海も渡ってゆける
あなたの助けがあるのなら、僕はいつでも強くなれる
あなたが僕を力づけてくれるから、ひとりではできないこともできるんだ

何もかもに満たされた人生などない
胸の鼓動はいつも激しく、思い乱れることばかり
でもあなたがそばにいてくれる、その奇跡が
時として僕に永遠を垣間見せてくれるんだ

When I am down and, oh my soul, so weary;
When troubles come and my heart burdened be;
Then I am still and wait here in the silence,
Until you come and sit awhile with me.

You raise me up, so I can stand on mountains;
You raise me up, to walk on stormy seas;
I am strong, when I am on your shoulders;
You raise me up... to more than I can be.

There is no life - no life without its hunger;
Each restless heart beats so imperfectly;
But when you come and I am filled with wonder,
Sometimes I think I glimpse eternity.
(シークレット・ガーデン『You Raise Me Up』)

☆Secret Garden You Raise Me Up 2002☆


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