月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

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美し国の水の物語

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今朝一滴の水のすきとおった冷たさが
ぼくに人間とは何かを教える
魚たちと鳥たちとそして
ぼくを殺すかもしれぬけものとすら
その水をわかちあいたい
(谷川俊太郎『朝』)

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浅田選手引退後の予想記事が引きも切らない。

記事の内容は玉石混淆で、明らかに悪意のある駄文も多いが、ファンの数だけアンチが騒ぐのも今に始まったわけではないので、それだけ彼女の人気の高さが今更のように窺い知れるというものだろう。

その中で、再スタートの初仕事という話題が、愛知県民栄誉賞第一号に顕彰されるというニュースとほぼ同時に報道された。

初仕事は、彼女の新しいスポンサーになるらしいウォーターサーバーの㏚会見で、地元名古屋を拠点とする会社の新しい給水器「Kirala(キララ)」のブランドパートナーに就任ということだった。
どうやら、こうした地元企業とつながりを深くする中で、彼女の長年の夢である「真央リンク」開設への布石としたいという思いがあるらしく、浅田選手らしいフィギュアスケートへの一途な気持ちが、会見で話した言葉の端々に滲み出て、現役の時と変わらず清々しい印象のある質疑応答だった。


※※※※※

【真央さん「第1号頂けて光栄」…新設の愛知県民栄誉賞】

 フィギュアスケートの2010年バンクーバー冬季五輪銀メダリストで、今月引退した浅田真央さん(26)が24日、名古屋市内で新CM出演の記者会見に臨み、愛知県が新設した県民栄誉賞に選ばれたことに「愛知県で生まれて、第1号の名誉ある賞を頂けてすごくうれしいし、光栄」と喜んだ。

 約130人の報道陣が集まった今回の記者会見が引退後の初仕事。新しい給水器のブランドパートナーになった浅田さんは純白の衣装で登場し「名古屋の地で再スタートできて、とてもうれしく思っている」と笑顔を見せた。

 12日の引退会見後は友人と一緒にご飯を食べたりして「楽しい時間を過ごした」と言い、第二の人生について「わくわくの方が強い。もっと(人間として)上へいけるように(今の)自分を超えていかないといけない」と話した。
【産経ニュース2017.4.25 07:15更新】

※※※※※

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人間にはそれぞれ、その人固有の霊的な佇まいというものがある。

よく知られた言葉では、それを「オーラ」と呼んだり、「雰囲気」とか「風情」「ムード」と言ったりするものだが、いずれにしても、頭脳的な計算や思惑で人工的に作り出せるものではなく、内面的な人となりが自然にあふれ出て、鮮烈なインパクトを周囲に与える個性的な空気といったものである。

※「アウラ」についての学術的な思索に関しては、2010年のこの記事を参照してほしい。
【滅び得ぬアウラ】

小難しい話はさておいても、すでに銀盤から降りたアスリートにさえ、いまだにまとわりつくプリマヴェーラの風のような光り輝く香気、天真爛漫な神々のような風格というのは、下世話なマスコミの要らぬ詮索や卑俗な言葉などにも一切びくともしないもので、泰然自若とはまさにこのことだなと感心する。

というよりも、端から次元が違う場所から世界を眺めているのだろうから、およそ経済的な損益で、引退後の活動戦略だの人間関係の軋轢だの商品価値だのとさまざまに憶測記事を並べ立てているライターには、とても考えの及ばない価値観で、「浅田真央」は再スタートする第二の人生を思索しているように思う。

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閑話休題。
真央さんの初仕事に踏襲して、「水」の話をしよう。

今では周知の生物学的事実ではあるが、人間の体内の水分量は、年齢、性別、あるいは肥満度によって違いがあるものの、胎児ではなんと体重の約90%、新生児は体重の約75%、子どもは約70%、成人は約60%、老人では約50%を水が占めているという。

さらに体内の水は、血液などによって体中を循環しながら、各細胞に栄養分や酸素を補給し、また、代謝老廃物を排泄したり、体温やPHの調節をしたりしながら、健康を維持するための重要な役割を果たしている。
尿や便、汗、あるいは呼吸などによって体外に常に排出される水は、一日に約2リットル以上、そこで排出された水分量を毎日摂取しなければ、たちまち血流が悪くなり、代謝が正常に働かず、体の機能不全や細胞組織の破壊、栄養不良といった状態に陥り、しいては脱水症状による生命の危機を招くとされている。

つまり、体調不良の原因を避け、すべての健康管理の基本となるのが、適切な水分補給ということになる。

ところで、今では当たり前のように知られているこのような事実も、今から三十年ほど前にはあまり認知されておらず、特に運動中の水分補給に関しては、吐き気に襲われたりお腹が痛くなるとか、運動効果が下がり疲労しやすくなるとかといった理由で、絶対というくらい厳しく禁じられており、まるきり正反対な常識がまかり通っていたものである。

無論すべてが非科学的で、とんでもない妄信かと言われればそんなことはなく、現在のようにPHを調整して体に消化の負担をかからなくするようなスポーツ飲料や、ミネラルを適度に含んだ飲料水などがなかった時代、激しい運動による発汗で体液濃度が高くなっている場合には、急にいわゆる普通の水道水を摂取すると、体液中の塩分などの諸成分が一気に溶け出して、結果、かえって脱水症状が進んだり、疲労困憊の程度が強くなったりしてしまうということもある。

また、いきなり冷たすぎる水を飲むと心臓に負担がかかる場合もあり、ジュースやお茶といった糖分やカフェインを含有する飲料を摂取すると、腹痛や頭痛、嘔吐、痙攣、昏睡あるいは急性の糖尿病などの水中毒による症状に見舞われる場合もままあることなのだ。

とはいえ、かつての日本で、スポーツやダンス演習などの運動中に水分補給することを禁じた背景の多くには、ハードな練習を根性で乗り切るとか、水を飲むとそれまでの努力が水の泡になるとか、理不尽極まる精神論がはびこっていたことは確かで、運動科学やスポーツ医学に対する十分な知識が、指導者やトップ関係者の中ですら欠落していたことも否めない事実なのである。

さても今や、常識が時代とともに変化することも当然の話、情報も知識もネット社会においては豊富なソースに困ることはない。
現代では個々の人間が、多くの情報源の中からいかに信頼できる情報を引き出し、健全で公正な判断をするか、その先にとるべき行動の道筋が残されているのだろう。

重要なのは、誰もが既成の概念や体制の圧力に屈することなく、特定の社会や時代にはびこる常識に疑念を持ち、知性的な良識をもって物事に対処しうるかということなのだ。

真央さんが「水」というキーワードに着目し、アスリートの枠を超えて、すべての生物にとって大切な、生きるための健康、安心、快適な飲料水の事業開発に携わったのは、ある点で結びついた必然であったし、ある点で彼女にとって何よりも大事なライフワークにつながっていくこととなるのだろう。
(勿論、「ある点」というのは、彼女が「人生」といったフィギュアスケートであるし、「ライフワーク」というのは、リンク開設を含む後進へのフィギュアスケート教育のことである。)

彼女が第二の人生に向かって再スタートと、はりきって臨む新しいブランドパートナーの事業が、この美し国の美しい精神によって起ち、美しい水で多くの人のこころを潤す流れとなって、美しい人が夢みる新しい希望、新しい(真央)リンク開設への礎となれば、それは真央さんにとってオリンピックの金メダルどころではない、人生の大金星ではないか。

真央さんの理想がどこまで現実に近づき、夢の実現化にこぎつけられるか、まだその果ては誰にも明らかな展望とは言えないが、だがたとえ、厳しい困難な現実が夢の行く手を阻んでも、あるいはまた、どこからか彼女の理想がかたちを変えてしまって、まったく別の結末へ向かったとしても、夢の終着を目指したその美しい精神、高潔な意志は、美しい水のごとく決して汚されないものだとまさきつねは思う。


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美しい精神は美しい姿にあらわれる。
ひそかにコレクションしてきたカレンダー画像の数々。最後にお愉しみあれ。

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水は澄んでいても 精神(こころ)はげしく思い惑っている
思い惑って揺れている
水は気配を殺していたい それなのにときどき聲をたてる
水は意志を鞭で打たれている が匂う 息づいている
水にはどうにもならない感情がある
その感情はわれている 乱れている 希望が失くなっている
だしぬけに傾く 逆立ちする 泣き叫ぶ
落ちちらばる――ともすればそんな夢から覚める

そのあとで いっそう侘しい色になる
水はこころをとり戻したいとしきりに禱る
禱りはなかなか叶えてくれない
水は訴えたい気持ちで胸がいっぱいになる
じっさい いろんなことを喋ってみる が 葉はなかなか意味にならない
いったい何處から湧いてきたのだろうと疑ってみる
形のないことが情けない
やがて憤りは重なってくる 膨れる 溢れる 押さえきれない
捨てばちになる
けれどもやっぱり悲しくて 自分の顔を忘れようとねがう
瞬間――忘れたと思った
水はまだ眼を開かない
陽が優しく水の瞼をさすっている
(丸山薫『水の精神(こころ』)

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