月船書林

フィギュアスケートの話題を中心に芸術を語る

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落ち葉を急ぐ季節に 其の弐


浅田選手のPCSは、昨季以前のベストスコアから比べると、ショートで3点以上、フリーで10点以上下げられている。つまり、オリンピックでは8点台を叩き出したPCSはショート、フリーとも7点台以下に抑えられているのだ。無論、シーズン緒戦の演技ということもあるし、新しいルールの導入などによってエレメンツの数が減って、女子選手全体のPCSが軒並み、昨季以前から低く抑えられているという説明もあるのだろう。だが本来、絶対評価で付けられるべき5コンポーネンツの考え方からすると、全く非論理的な話なのだ。

日本の女子選手三人、浅田選手、安藤選手、鈴木選手に視点を合わせて鑑みると、PCSによる仕分けということからするに、今のところ実力に対する評価が拮抗している状態ということだろうか。

フリーではずば抜けたジャンプの安定力から高いTESを稼いだ安藤選手が、トータルスコアと順位の上では世界女王の座に向かって一歩リードした形になっている。だが、PCSの得点上は、安藤選手を鈴木選手が初めて追い抜いたという逆転現象が起きている。しかし、数値的なものを分析すれば、鈴木選手のPCSは昨季からさほど低下しなかったというだけで、ショートで27点前後、フリーで57点前後というレベルをひとり保ち、浅田選手、安藤選手という五輪シーズンは彼女より上位にいた二選手のPCSが、ショートは30点台、フリーは60点台という数値を割ってしまったという事態に陥っているという話なのだ。

浅田選手はみなが知っている通り、今季はジャンプの矯正でGPSはさらに先の目標を目指すための、いわばテスト的な挑戦の意味合いを濃くしている。彼女の高い向上心は特筆に値するものなのだが、だが残念ながら彼女には、チャン選手の発言にあったような「練習で出来ていれば評価」してくれたり、「選手や振付師と一体になって仕事」をしてくれたりするジャッジの存在は望めそうにない。あくまでアウェーで、自らの克己心を武器に苦難を乗り越えていかなくてはならない。(勿論、浅田選手が自分を甘やかすような、判定の依怙贔屓を望んでいるとは決して思わないのだが。)

心配なのは、未完成のジャンプで試合に臨み続けることによってPCSの評価がさらに崩落する可能性もあるということ。押しも押されぬトップスケーターだけに、ある一定水準以下の演技を見せてしまうことが、ワンシーズンを怪我などで休養する以上の痛手をPCSに与えてしまう危険性もあるのだが、むしろそれさえも承知でリンクに立ち続けているような不退転の覚悟というのか、彼女らしい意志の強さを感じるのは、まさきつねだけではないだろう。

そしてもうひとり、安藤選手であるが、シーズン初めのこの時期にあれほどのパフォーマンスを見せながら、昨季以前のPCSベストスコアを大きく下回る得点しかもらえないのは、彼女がすでに世界タイトルも獲った過去のスケーターとして位置づけられているからだろうか。
だが、彼女の挑戦もまた、3Aを跳び続ける浅田選手のジャンプ構成に優るとも劣らない、タフなアスリートらしい攻撃的なプログラムだ。

初戦らしくやや慎重に、五連続ジャンプをまずはしっかり決めることを目標にしたのか、丁寧さが先だって、外側に弾けるような表現力や何かが憑依したようなパッションといった彼女らしい醍醐味にはまだ辿り着いていなかったが、それにしても5コンポーネンツが伸びないという印象は拭いきれない。元々弱いトランジションの項目に関しては、5点台を付けたジャッジもおり、後半の連続ジャンプ以上に濃い繋ぎがあるのかと、またもや高難度の技よりもあからさまな演技アピールを評価する判定傾向にうんざりしてしまう。
確かにステップやスピンに、構成が細か過ぎたりバリエーションが難解だったりが仇になって、レベルを獲りこぼしているのではないかと思われる部分があり、彼女らしい美しさがもう少し洗練されるのではといった伸びしろを感じたのは、PCSが抑えられた一因であったのかも知れない。

いずれにしても、男子選手に比べると明らかに女子選手全体のPCSや得点が低く抑えられているのは間違いないところなので、これからシーズンが進むにつれて五輪シーズンくらいに伸びていくのかどうかは分からないが、少なくとも歴代最高点だの昨季までのパーソナルベストだのが、何の目標にも参考にもならないという側面だけは見えている。まあ、今更そんなものに翻弄されている選手もいないのだろうが、感情をコントロールしながら、高い身体能力を伸ばしていく真の力を養って、貴重な経験を活かす強さを身に付けて欲しい。

まさきつねは元々、数値で選手の力を分析したり、何かを語ったりすることは大の苦手だ。今回のエントリーはいささか無理をしてしまった。だから多くの方から苦言をいただきそうな気がしているが、明らかなまちがいや解釈の違いは遠慮なくコメントいただきたい。

あっという間にGPSも折り返しである。木々は落ち葉を急いで吹き散らし、秋は静かに深まってゆく。沈思するほどに実りの多い季節であってほしいと思う。

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まさきつねさま、丁寧な回答を本当にありがとうございました(男子の比較くらいのボリュームを想像してました。すみません)
ご指摘のとおり、私も安藤選手のフリーのPCSが低いと感じました。ワールドの金/銅メダリストという実績も抜群ですし、ここ数シーズンは演技/結果ともに安定している(その点ではアボット以上に理解に苦しむところです)。何よりもこれだけまとめてきたのに。安藤選手に対する評価というより、プログラムに対するダメだし(特につなぎの点数)ですかね? また、浅田選手に対するコメントで「未完成のジャンプで試合に、、、」とありますが、本当にそう思います。ただ、そんなにこの状態が長引くでしょうか。初戦は本当に苦しかったと思いますが、練習の映像を見る限り、次はもっとまとめてくるような気がします。そもそもジャンプの構成が最高難度なわけですから、もし思うようにならなかったとしても、あまり自分を追いつめて欲しくないです。 男子のPCSについてはプログラム全体としてまだ散らかってるものの、4回転を成功させる選手も多く、パワーアップしてる部分があるのも確かだと思います。
2010/11/10(水) 午後 1:05 [ とまと ]

以前、2009年に回転不足の二重減点が導入される前、チャン選手のPCSが低いのがとても疑問だったことがあります。スパイラルはとても美しくスピンも誰もやらないポジションでした。それでもPCSが低いのはなぜかと演技をじっくり見た結果、ステップの時のスピード感が無い事かな、と思い至りましたがどうでしょか、、。
今シーズンは、片足だけでかなり長い間滑り続けるコリオステップが新登場しましたがそれ程高評価を得ていないようです。今まで浅田選手、長洲選手のプロでしか見かけていませんが、両方ともPCSはそれほど上がってはいないようです。男子のプロではよく見かけるような気がしていますがPCSとの相関性までは見ていません。
この片足ステップはスケーティングスキルに直結する技のように感じるので、今後のPCS評価はちょっと気になりますね。誰もが出来ることではないような気がしますので、、。
2010/11/10(水) 午後 3:14 [ sachi ]

とまとさま
このエントリーは回答になっていたでしょうか。昨季までのPCSやベストスコアを調べているうちに、時間と胸のもやもやが溜まってしまいました。
安藤選手のPCSの低さは確かに、モロゾフの五連続ジャンプ構成へのあてこすりみたいなものを感じます。回転不足やエッジエラーに対する不透明な判定もあいかわらず、高難度のジャンプへの挑戦を嘲笑うかのようですが、選手たちには何とか粘って欲しいと思います。
浅田選手の件はすべてが杞憂で終わることを心から祈っています。何にせよミラクル・マオというか、ほかの選手たちとは全く違う途方もない離れ業をやってのける、いわゆる定石というものが通用しないアスリートですからね…目が離せないのです。
2010/11/10(水) 午後 5:15 [ まさきつね ]

sachiさま
コメントありがとうございます。
チャン選手、確かに数年前は採点以上に魅せられる選手でした。今もフットワークは見事だし、ステップでハイスピードをキープする力もついていると思います。ただし、いつも一辺倒。構成に多彩さがないのです。
片足ステップもそうですが、エッジワークの多彩さをもっと評価すれば、浅田選手だけでなく鈴木選手、長洲選手ももっとPCSが盛られてしかるべきですよね。何しろ昨季は足元に観るべきものなんかない、キム選手の幽霊ステップが評価されたのですから、数値で語ることに限界を感じてしまうのですよね…。
2010/11/10(水) 午後 5:35 [ まさきつね ]

まさきつねさま(sachiさま)
すみません、質問なんですが、「スパイラルはとても美しくスピンも誰もやらないポジション」とは、チャン(パトリック)のことですか?それとも、ジャン(キャロライン)選手のことですか??間違ってたら恥ずかしいのですが(笑)、もしかして?と思ってしまいました。
まさきつねさま
「時間と胸のもやもやが溜まって、、」本当にすみません。そして、ありがとうございました。
2010/11/10(水) 午後 7:12 [ とまと ]

とまとさま
sachiさまのコメントをあわてて読み返しています。そういえばスパイラル? 確かにジャン選手なら符合しますね。今の変わり様にはびっくりしましたが、彼女もシニアデビューの頃はパールスピンだ何だと持ち上げられ、そしてジャンプのエッジエラーと回転不足を長洲選手同様、執拗に判定されていつのまにかトップスケーターの位置から消えていきましたね。PCSが伸びなかったのは、いわゆる実績不足だろうと思うのですけれどね。
地道にジャンプを矯正して、中堅のスケーターとして真摯に頑張っている姿は、PCSや順位がどうであろうと関係なく心を打つものがありました。それこそチャン選手やキム選手の演技には決して滲み出ないものですね。
とまとさま「時間ともやもや」は決して、とまとさまのコメントのせいではなく、今のフィギュア界の現状や数値によるストレスですのでどうぞお気になさらず。数字に悩まされる現状は早く解消して欲しいですね。
2010/11/10(水) 午後 9:50 [ まさきつね ]

まさきつねさま そしてとまとさま
ごめんなさい、一字間違えました。チャンじゃなくジャン選手です。
ジャン選手のNHK杯の演技には心底感動しました。真正面からクセの修正に取り組んでいましたね。ジャン選手は確か3-3も跳んでいたでしょうか。二重減点で順位操作されなければ、余裕で表彰台に乗れる実力者だったのではないかと思います。ファンの方には申し訳ないですがPチャンさんの演技は総じて動きが強引、乱暴で、プロポーションも貧相なので美しさを感じません。キム選手の幽霊ス添ップはいいですね。私は千鳥足ステップと思います。二日酔いみたいに、あっちでよたよたこっちでズルリ、動きにまったく締まりがない。しらじらしくて幽霊と呼ぶ程の雰囲気もない。。h何が美しいと感しるかは人それぞれですね。ISUのジャッジは趣味が悪い人ばかりなんだと思ってます(笑)。そして、いくらジャッジが腐っても、特定の選手を採点で愚老し続けても、真摯な選手たちからはフィギュアスケートが好きという気持ちや成長しようとするひたむきさを奪うことは出来なかったようですね。
2010/11/11(木) 午前 9:40 [ sachi ]

まさきつねさん、こんにちは。
私も生観戦していて美姫ちゃんのステップに感動したのですが、意外とレベルも加点も低かったので残念に思ってました。でも今までと違って、女の強さみたいなものが全面的に出てるいいプログラムでした。やはり噂されてる通り、真央ちゃんが復活しない今季は安藤選手下げに徹するのでしょうか?
鈴木選手はトリノでしか見たことありませんが、今季の方が確実にレベルアップしてます。長久保コーチが真央ちゃんのジャンプコーチをしたことで、もっといろんなことを教えてもらおうとか刺激されたと言っていたので、それがいい方向にいったんですね。今回は力みすぎたと思うんですけど、終わった後ファンに向かってごめんと手を合わせてたのが印象的でした。ロシアが楽しみですね。
今季も対真央ちゃんには、なんだかんだと理由探しては下げ材料にされてますね。ジャンプが跳べないのに脅威を感じてる証拠です。全日本で復活してワールド連覇できるといいですね。銀河女王は本当に出るのかわかりませんが。
2010/11/12(金) 午前 11:34 [ cha ]

そういえば中国杯で、なぜかカクミンジョンの応援幕が結構ありました。彼女のジャンプが認められるルールになると怖い存在ですね。今はあきらかに回転不足だしよく転倒しますが、AT所属ですから。
2010/11/12(金) 午前 11:39 [ cha ]

sachiさま
再度のご訪問うれしいです。レスが遅くなってごめんなさい。
やはりジャン選手でしたね。最近の採点は、見た目とは違い過ぎていて、まさきつねにはもうあまり語る気力が起きません。
ISUのジャッジの感覚は凡人とは違い過ぎるということでしょうね。
2010/11/14(日) 午後 0:28 [ まさきつね ]

chaさま
ご訪問うれしいです。コメレス遅くなりました。ごめんなさい。
アメリカ杯が始まってしまったのにこの体たらくです。鈴木選手についてようやく記事を書きました。続いて安藤選手も書きたいのですが、なかなか筆が進まず失礼しています。
カク・ミンジョンや中国の若い選手が、日本の村上選手を含め、今のお偉方たちの一押しになってくるのでしょうかね。ソチに向けて、新戦力となることは間違いないのでしょうが、どの選手も揃って何だか小粒で、まだその魅力が良く掴めません。
作られたアイドルやヒーローはもう沢山です。PCSで粉飾されて、採点結果もわくわく感が消えました。一般のファンが心をこめて作った動画の方が、よっぽど感動がありますね。
2010/11/14(日) 午後 0:37 [ まさきつね ]

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